FacebookのIPOが値決めされる前にモルスタやゴールドマンが一部の機関投資家にアナリストによる業績予想の下方修正を伝えていた事件が「選別的情報開示」だったとして問題化しています。

しかしこれはマスコミが事実関係を取りちがえています

同社は投資家に対して2回、業績についてSECへの提出書類を通じて開示しています。

一回目は売出し目論見書を固める際、第1四半期の業績についてSECに報告したときです。この報告では第1四半期の利益が減益となっていて、話題を呼んだ事を皆さんも覚えていると思います。

二回目はIPOのマーケティングをキックオフした後に、モバイルにおけるマネタイゼーションの遅れをSECに対して開示しました。

モルスタやゴールドマンのアナリストはこの二回目の開示に呼応する形でアナリスト予想を下げたのです

だからFacebookが一般投資家への情報開示を怠って、公平な開示がなされなかったというのは、全くの誤解です。



ただ、主幹事が「モバイルのマネタイゼーションの遅れで、うちのアナリストの業績予想数字がチョット悪くなります」ということを大口機関投資家だけに口頭で断って、小口投資家には説明が無かったのは事実です。

これは幹事証券が悪いのではありません。幹事証券はルールに従って、そうしたのです。

なぜ全員に徹底できないかといえば、クワイエット・ピリオド(=緘口令期間)というルールがあるからです。

現在、アメリカではIPOマーケティング中ならびに値決め後1カ月は引受に関与した証券会社はリサーチを出してはいけないことになっています

だから幹事証券からのコミュニケーションはまるで「あうんの呼吸」のような、口頭での、曖昧な表現にならざるを得ないのです。

これを改善するためには2つの方法があると思います。

まずIPOマーケティング期間中でも、リサーチ・レポートや引受幹事のアナリストの業績予想を出してよい、いや、出す事を義務付けるようにすれば良いのです

そうすれば、アホな予想数字で投資家の誤解を招くような煽りをすれば、そんな証券会社はすぐ処罰することが出来ます。

なまじ「書いたものを、出してはいけない」というルールがあるから、業績見通しに関する大事な変更を、そのIPOを買おうとしている投資家全員に一斉にコミュニケートできないのです

もちろん、引受のルールには(offering by prospectus only)という大原則があります。これは「SECに提出された売出し目論見書だけをベースにして、投資判断しなさい」というルールです。その目指すところは、全員が同じ開示書類を使用するのだから、フェアだという状況を作り出す点にあります。

しかし、実際には、誰がちゃんとSECへの提出書類を読んでいるでしょうか?

売出し目論見書は難解すぎるし、今回のモバイルのマネタイゼーションの遅れに関する追加開示も、変更箇所がよくわからない、さらに微妙なニュアンスの変化が、個人投資家にとって何を意味するのかはプロでもないかぎり到底理解できないという問題が付いて回るのです。

若しSECが本気で大口機関投資家と個人投資家を同じ土俵で扱おうと思うなら、個人投資家の負っている知識面や情報咀嚼(そしゃく)能力まで配慮した法律にすべきです

これはドットコム・バブル時代からずっと言われ続けてきた問題であり、矛盾した法律でいちばん困っているのは幹事証券なのです。