昔、日本がバブルの頃、金融機関はホイホイとお金を貸しました。

「ほら、持って行きなよ。困ってんだよ、お金が余っちまって。札束がアツアツ過ぎて、ポケットが焦げて穴があいてんだよ」

そういう甘言に乗った人々は、借りたお金で不動産を買い、社員の保養施設を建設し、金屏風を買ったわけです。

もちろん、借りた側が悪い。

でも物事には必ず表と裏、借りる方と貸す方、乗せられた奴と乗せる奴が居るのです。

知的な正直さ(intellectual honesty)とは、そういう当り前の物事の道理を、個人の持つ先入観や価値観に囚われず、冷徹に分析できる理性を指します。それは言い換えれば、科学の立場ということです。

「ギリシャ人は働かない」
「ギリシャ人は無責任だ」

その意見に、僕も賛成です。

だけど、、、ギリシャ人のそういうキャラは今に始まったことではなくて、3年前も、5年前も、10年前もずっと不変だった筈です

国民全員が突然、働き蜂になったり、プータローになったりは、しない。

僕がギリシャ人を責める人たちの議論を聞いていて不思議に思うのは、(そんなにギリシャ人が怠け者だとわかっていたなら、、、なんで最初から指摘しなかったの?)ということです。

下のグラフを見て下さい。
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これはギリシャ、スペイン、ドイツの各国の経常収支を示したものです。昔はバランスが取れていたのに、通貨ユーロを導入してからどんどん不均衡が拡大したことがわかります。



ギリシャやスペインの赤字が増えていて、逆にドイツの黒字が増えているのはギリシャやスペインがどんどん消費を拡大し、それに対してドイツが商品を売りつけたことを示唆しています。

これはたとえば中国製品をアメリカが沢山輸入し、その結果としてアメリカの貿易赤字がひどいのと、たいして変わらない構図だと言えば、分かってもらえますかね?

言い換えれば、借金がどんどん増えているのを承知で、ギリシャやスペインにお金を貸し、商品を売り付けた奴が居るということです。

もっと言えば、共通通貨ユーロを採用するねらいのひとつに域内でのクレジット(信用)の平準化とそれによる商取引の活性化というものがあったわけですから、ユーロ通貨圏は、所期のデザイン通りのパフォーマンスを発揮した、、、ただそれだけの事です。

「ギリシャが借金を踏み倒すのは許せない」と言うけれど、借金というものは銀行の立場から見れば利益を生む資産(アセット)なわけで、メシのタネに他なりません。だからこそ、それが銀行のバランスシートに載っているわけです。

問題は信用、つまりクレジットというものの膨張や緊縮のペースのほうが、賃金や競争力や生産基盤などの伸縮よりも遥かに早いペースで起きるということなのです

ドットコム・バブルのとき、ペット・ドットコムのような泡沫的な企業がどんどん設立されました。そういう株を、先を争って買った投資家が居る。もちろんそういう会社を作った経営者は責められるべきだし、そんな株を売った証券会社も罪作りです。

でも欲ボケでそういう株にオテツキ投資をしてしまった投資家は、単なる被害者なのでしょうか?

いやしくも金融のプロを自称するような人たちでさえ、通貨ユーロ採用にまつわる信用創造の経緯を棚に上げて単なる被害者ズラしている人たちが居る、、、僕はそこにご都合主義的な責任のなすりつけを感じるし、金融人としての不正直さ、オツムの弱さを感じずには居れないのです。