ドイツの週刊誌、デア・シュピーゲルがドイツのショイブレ財務相に全力体当たりのインタビューをしています。以下はその抄訳です。

シュピーゲル:ユーロ崩壊じゃないか?

ショイブレ財務相:世界は変わったことが、わからないのか。問題はドイツがどう豊かさをキープするかだ。それには€(ユーロ)が必要だ。

シュピーゲル:通貨統合が崩壊したら欧州連合自体も存続できないのでは?

ショイブレ財務相:世界がひとつになろうとしているときに、個々の国がてんでバラバラの方向へ行く話をするなんて、おかしい。それは絶対に起こらないし、そういう事を起こしてはならない!

シュピーゲル:ユーロの導入は間違った判断だったか?

ショイブレ財務相:通貨統合はロジカルな結果だ。

シュピーゲル:でも現実としてユーロは「流産」した。政治統合もない。

ショイブレ財務相:「流産」という形容はナンセンスだ。政治統合が所期のカタチで実現していないのは事実だ。根本的な命題は、「我々はもっと緊密になりたいのか、それともこのアイデアを投げ出すか?」の二者択一だ。

シュピーゲル:それであなたとしては博打を打ちたいと言っているのか?

ショイブレ財務相:若し「統合は初日から100%上手く作動しないといけない」と言い張り、その立場を譲らなければ、われわれは一歩も前進できないだろう。

シュピーゲル:共通通貨は我々の経済を破壊するパワーを持っている。

ショイブレ財務相:大袈裟な言い方はやめてくれ。欧州連合は常に二つの大原則で動いてきた。それは1.いまはムリでも将来、いずれ夢は実現する、2.そのためには上手く行っていないことを途中で手直ししながら進まなければいけない、ということだ。

シュピーゲル:そういう言い方をすると、あなたはあたかもユーロの設立当時の欠陥を修繕するために、まず危機が起きて欲しいという破滅願望を抱いているように聞こえる。

ジョイブレ財務相:わたしは絶望したり観念したりするタイプの人間ではない。ひとりでも多くの人が、ユーロを失う事で、我々が何を失うのか?という事に気がついて欲しい。

シュピーゲル:ここまでの欧州財政危機の教訓は?

ショイブレ財務相;われわれが必要としているのはもっとヨーロッパがひとつになることであり、その逆ではない。

シュピーゲル:あなたの主張は、自転車はペダルをこいでいないと倒れるという「自転車理論」に聞こえる。


ショイブレ財務相:もちろん、そう考えている。

シュピーゲル:そんな危なっかしいデザインの仕組みは永続性があるのか?

ショイブレ財務相:僭越ながら、ゲーテの「ファウスト」を引用して、いいかね?そこでは「より良い状態を求めることは、人間の存在のきわめて基本的な状態だ」という事が書かれている。

シュピーゲル:欧州問題を語るのに「ファウスト」を持ちださなければいけないほどわれわれは追い詰められているのか?

ショイブレ財務相:たぶんね。だがこれだけはわかって欲しい。ヨーロッパという地域は複雑なんだ問題がちょっと入り組んでいるというだけで、平民や金融関係者はすぐに自信をなくしてしまう。ヨーロッパの強さはそのダイバーシティ(多種多様さ)なのだ。だからひとつのルールをごり押しするわけにはゆかない。

シュピーゲル:それでは実際にどう実現する?

ショイブレ財務相:最も重要なことは財政統合を実現することだ。これは個々の国の財政主権を放棄することを意味する。またスペインの例が示しているように欧州は銀行同盟を速やかに実施した方がよい。

シュピーゲル:あなたはなぜこの問題でこれほど頑固なのですか?

ショイブレ財務相:それはお金を借りるということと、その決断をしたときに発生する責任という問題は切っても切り離せないからだ。

シュピーゲル:ドイツとしてユーロ共同債を容認する条件とは?

ショイブレ財務相:欧州財務省、欧州財務大臣の設置が必要になる。その欧州財務大臣が予算に対して拒否権を持てることが理想だ。

シュピーゲル:あなたは向こう5年くらいの期間にドイツの国民が財政主権を放棄するような憲法に賛成票を投じると思うか?

ショイブレ財務相:レーガン大統領が1987年にブランデンブルグ門に立って、「ゴルバチェフよ、このベルリンの壁を除去しなさい!」と演説をぶったとき、ドイツの国民の多くは「レーガンは頭がヘンになった」と言った。ところが、わずかそれから2年で、ベルリンの壁は本当に除去されてしまった。その当時、私自身も(いくらなんでも、それはムリだろうな)と思ったことを今でも覚えている。あれは1989年の春だった。私はそのときボンの内務長官に任命されたばかりだった。米国の新しい外交官が挨拶に来て、「あと3年以内にベルリンの壁が取り払われるだろう」と予言した。私は「数カ月前なら、それは絶対に起きないと断言するところですが、このところの政情から考えて、あと10年くらいのうちに、それが実現するかもしれませんね」と答えておいた。ところが、実際にはそれから半年で壁は無くなってしまった。

シュピーゲル:きょうはありがとうございました。