6月22日にシリア軍がトルコ軍機を撃墜しました。この事件をきっかけにシリアとトルコの間で緊張が高まっています。

最近、シリア軍の内部では離反者が続出しています。なかでもシリア空軍のパイロットの相次ぐ離反は同国政府にとって微妙な問題です。なぜならシリア空軍の軍人になるということは最もエリートコースだからです。

シリアは人口の約2割を占める少数派のアラウィー派が政治の実権を握っています。アサド大統領もアラウィー派です。

しかし空軍の将校の7割はスンナ派が占めています。アサド政権がこのエリート空軍将校たちをコントロールできなくなりつつあるのではないか?という観測が飛び始めているのはそのためです。

一方、トルコは北大西洋条約機構(略してNATO)の条約第四条に基づいて6月26日に北大西洋条約機構(NATO)の理事会を開催することをリクエストしました。

加盟国は単独で軍事行動を起こす前にNATOにお伺いを立てるのがタテマエだからです。26日の理事会はシリア情勢に関するコンサルテーションが主目的です。



同条約第五条には「NATO加盟国のひとつ(=トルコも加盟国)に攻撃が加えられた場合、それはNATO全体に対する攻撃だと見做す」ということが謳ってあります。このことを集団防衛条項と呼びます。

このためトルコは条約上、単独では軍事行動に移すことを決めないことになっています。今回のコンサルテーションはNATOの手続きにトルコが従ったものなのです。

加えてトルコが若し作戦行動に出る場合は、実際問題として米軍の支援が必要になると思われます。ここで米国が動くかどうかは不明です。

上記のような経緯から、今はシリア情勢を憂慮するNATOならびにサウジ、トルコなどの国々は今が一番、シリアに対してプレッシャーをかけやすいクライマックスにさしかかっているわけです。

さて、シリアを攻撃すればシリアに地中海の足がかりを持つイランにもプレッシャーをかけることができます。これを利用して米国側はホルムズ海峡を巡る緊張の高まりをどう解決するかという問題とセットにして政治的駆け引きを行うと見られています。

そこではアサドを亡命させる根回しが議論されるかもしれません。

一方、米国によるイランへの経済制裁はじわじわ効いていると言われています。ただ日本、中国、シンガポール、インド、トルコ、マレーシア、南ア、韓国、スリランカの各国は経済制裁への協力を免除されているので、経済制裁は正直なところザルになっています。

そこで米国は制裁強化をチラつかせながら交渉をすすめることになります。仮に米国との一対一の交渉で何か合意されても、11月の大統領選挙でオバマ政権が敗れれば、合意が反故にされる可能性があるのでイランはこれを心配しています。

イランにとって最も有効な抵抗の仕方はホルムズ海峡での示威行動をエスカレートさせ、原油価格を吊り上げるやり方です。このところ原油価格が跳ねているのはこの理由もあります。

米海軍の報告では、これまでのところイラン海軍はきわめて行儀よく行動しており、テンションのエスカレートは見られないそうです。

下は米国原油のETF(United States Oil ETF:USO)のチャートです。
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