外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々
外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々
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★★★☆☆
評者:広瀬隆雄

この本で、おそらく著者がいちばん頭をひねり、逡巡、推敲、思案の果てに決めた部分は、同書のタイトルだと思います。つまり『外資系金融の終わり』という題です。

で、それでも(未だインパクトが足らないな)と思ったのでしょう、「年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」というサブタイトルで、グサリととどめを刺した……

えげつない年収のヒケラカシ、優越感の、傷口へのひりひりするようなスリコミ……僕としては、これを大いに評価したい!(笑)

冗談は兎も角「外資系、オワタ!」と言い切ってしまうのは、カンタンなようでカンタンではありません。特に投資銀行界の内部の人間にしてみれば「本当に、こんなウマい商売が、終わってしまったの?」という未練と悲哀があるわけです。だからこそオワコンになっていると判り切っているものを、正直にオワコンだと認めにくい。著者は、この部分で完全にフッ切れている……そこが立派だと思うのデス。

本書に書かれている内容は、日頃からMarket Hackをご愛読いただいている皆さんにしてみれば、特に新しい発見は無い筈です。でもそこが同書のポイントではない! 

同書のポイントはスタッカートに盛り上がるセクスィな筆致で、投資銀行という仕事のおバカなリアリティを活写しているところにあるわけで……例えばこういう記述があります。

キャバクラの経営をはじめたセールス部隊

株のセールスなど、社内のアナリストが書いたレポートを要約して、クライアントの機関投資家に毎朝電話するだけの誰にでもできる簡単な仕事である。機関投資家のファンドマネージャーも、むさ苦しいおっさんから毎朝電話がかかってきたらうざいだけだ。そこで、外資系投資銀行のセールスチームの優秀なマネージャーたちはすばらしいビジネスモデルを生み出した。(中略)セールス部隊は顔がいい女子大生を多数雇って、毎朝、客に電話させ、夜は酒を飲みながら接待させることにしたのだ。(中略)「ファンドマネージャーは玄人よりも素人のほうが好きだ」というのは本当の意味で真理の発見だった。(後略)



で、僕もこの本をダイヤモンド社の方から献本頂いた時、編集者の方の願いというものをテレバシーでビンビンに感じました。書評を、書かずにはおれなかったのです。

僕自身、この本に出て来る「キャバクラ経営を始めたセールス部隊」に居たわけですから、ついつい昔のサービス精神が、ムクムクと頭をもたげて来る……職業病的既往症がブリ返してしまったわけです。

諸行無常。