早い話、ソフトバンク株主のカネで、余り見込みのない北米携帯市場に於いて博打を打つ……それがソフトバンクがスプリント・ネクステル(ティッカー:S)買収でやろうとしていることです。

現時点ではソフトバンクがスプリント・ネクステルの全部を買収するのか、それとも3分の2の株式を支配しようとしているのかは、明確ではありません。買収額は買収の条件に応じて、150億ドルから250億ドルになると思われます。

スプリント・ネクステルは全米第3位の携帯電話オペレーターですが、そのトラックレコードは芳しくありません。

下は同社の一株当たり利益(EPS=青色)と一株当たりキャッシュフロー(CFPS=赤)の推移です。
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見ての通り、赤字続きです。

因みにスプリント・ネクステルよりはるかに大きい上位二社の業績を示すと、先ずAT&T(ティッカー:T)は:
4


次にベライゾン(ティッカー:VZ)は:
1


となっており、いずれもちゃんと利益を出しています。マージンは以下の通り:
5


売り上げ規模はAT&Tが1,271億ドル、ベライゾンが1,152億ドル、スプリント・ネクステルが353億ドルです。

スプリント・ネクステルは関連子会社にクリアワイヤー(CLWR)の発行済み株式数の約半分を持っており、クリアワイヤーは膨大な周波数帯域ライセンスを保有しています。またクリアワイヤーの技術(TDD LTE)はソフトバンクの技術と相性が良いです。

クリアワイヤーの業績も掲げておきます:
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因みにクリアワイヤーの売り上げ規模は13億ドルです。



なお、米国の携帯電話市場は殆ど成長していません。

AT&Tの過去10年間の売上高成長率は3%、ベライゾンは5.5%、スプリント・ネクステルは-4.5%でした。

だからソフトバンクは米国市場の急成長を見込んで今回の買収を企てているのではありません。

外国企業は米国の通信事業に投資して、酷い目に遭っています。一例としてドイチェテレコムはTモバイルに投資したのですが、その結果は芳しくなく、いまTモバイルを処分しようとして苦労しています。

同社のTモバイルへの投資は結局、100億ドル近い評価損を計上する羽目に陥りました。TモバイルはメトロPCSと合併交渉中です。

スプリント・ネクステルはiPhoneへの投資負担が重く、外部からの資本注入を必要としていました。

つまり今回のディールはソフトバンクにとって「got to do」なディールではないけれど、スプリント・ネクステル側にとっては「must do」なディールだっというわけ。