年金受取開始年齢の順次引き上げは、世界的な流れになっています。これに呼応して高齢者の雇用環境がしっかり整備されなければ、職は無いのに年金も受け取れないという恐ろしい状態になります。世の中の流れを敏感に感じ取っている一部の人たちは、そういう戦慄すべき未来に備えて、生活防衛のためのファンドを計画しはじめています。初老の人たちによる、ネット証券口座開設ブームは、その現れです。将来の不安に備える「生活防衛ファンド」である以上、毎月分配型みたいに、お金を預けた先から、どんどん取り崩しが始まる、アフォな設計になっている投信はアウト。60歳の「Xデー」までに、なるべく手堅く、お金を増やしたいということだから、自ずと運用戦略も限られてきます。大きな失敗が出来ない以上、或る程度の分散投資であることが必須でしょう。また、比較的リタイアメントまでに時間が無いので「大きく負けない」ということも凄く重要。ほどほどのインカム・ゲインがある投資対象が良いでしょう。但し、利回りは高すぎないことが重要です。なぜなら高すぎる利回りは、普通、隠れたリスクを孕んでいるからです。低コストの投資対象を選ぶことも重要なので、証券会社や投信会社が提案してくる諸々の投資機会(=それらは、彼らを儲けさせることを意図して企画されている)も、無視。そういう基準から、手作り生活防衛ファンドにピッタリの投資対象を考えてゆきたいと思います。

今日は生活防衛ファンドを考える上での基本的ルールを示します。

【ルールその1: 分散投資】
先ずルールその1として分散投資を心掛けるという点です。生活防衛ファンドは、60歳から65歳の間に失職し、無収入になってしまった場合に取り崩し、何とか年金支給開始年齢まで漕ぎ着けることを目的としているわけですから、ホームラン狙いがその本旨ではありません。手堅い運用を最優先とします。


そのためには分散投資を心掛ける必要があります。分散投資の基本的な法則については以前、Market Hackで解説しました。

ここでは最低、10銘柄くらいに分散することを目標としたいと思います。ただ、コツコツ資金を足してゆくというシナリオを想定しているので、初日から10銘柄揃える必要はありません。貯金がたまった段階でひとつひとつ銘柄を買い足してゆけば良いのです。

また16銘柄以上に銘柄を散らすこともお勧めしません。目が届かなくなってしまうからです。またそれ以上、銘柄を分散しても分散効果はそれほど上がりません。

銘柄を分散する際は、一つの業種に偏らず、セクターを散らして下さい。また投資国も分散して下さい。

【ルールその2:ターンアラウンドを買うな】
二つ目のルールは、「ターンアラウンドを買うな」ということです。これは生活防衛ファンドという投資目的だけに適用される、特別ルールだと思って下さい。なぜ生活防衛ファンドでは底値拾いを避けるかといえば、それは「失敗ができない」からです。

社会人になったばかりの若い人の場合だと投資の際に犯しやすい過ちは「リスクの取らなさ過ぎ」であるケースが多いです。でも今回論じている、生活防衛ファンドの目的は、ホームランをかっ飛ばす事では決してなく、「将来必要なときに、かならずそこにあって欲しいお金」なわけだから、博打を打つわけにはゆかないのです

安値を拾おうとする行為は僕も大好きですが、それはリスキーです。「将来、ひょっとすると状況が好転するかもしれない」という淡い期待に基づいた投資戦略が、ターンアラウンドに立脚した投資戦略なのだという自覚があれば、(それじゃ、ぜんぜん状況が好転しないリスクも、あるよね)という事に気が付く筈です。

「日本株は、安いよね」という議論は、もちろん成り立つのですけど、それは「将来、ひょっとすると状況が好転するかもしれない」という淡い期待に基づいた戦略に他なりません。皆さんは将来、日本の状況が好転するという確信をお持ちですか? 若し、(苦しい状況が、当分続くかもしれないな)と心からそう思うのなら、思考停止的な買い下がり戦略を続けることは、キケン以外の何物でもありません。

僕なら、生活防衛ファンドにおける日本の資産を全体の4分の1以上にすることは無いと思っています。なぜなら、多分、皆さんは証券口座の他に銀行の普通預金口座などを持っており、既に円貨にオーバーウエイトの状態になってしまっているからです。

もう一度、強調すると、生活防衛ファンドでは、フツーに、日々の業務を続けている状況で、別に経営環境が改善しなくても、チョッピリ毎日成長するようなビジネスを買うべきということなのです。今、日本企業のどれだけがこの基準をクリアできますか?

【ルールその3:エロ・ディフェンシブな銘柄を買う】
最後のルールはエロ・ディフェンシブな銘柄を買うということです。エロ・ディフェンシブというのは僕の造語で、保守的だけど、チョッと色気がある銘柄という程度の意味です。

ディフェンシブとは「守り型」という意味です。景気に左右されにくく、日常の生活に必要な、ベーシックなアイテムを作っている会社は、ディフェンシブです。

折角ディフェンシブな性格を備えている会社でも、ぜんぜん成長できていない会社も多いです。この場合、最も重要なのは、キャッシュフローの成長という尺度です。僕にとってエロい銘柄というのは、突き詰めて言えばキャッシュフローを着実に伸ばせている会社に他なりません。キャッシュフローが育めないのであれば、そんな銘柄はぶった切るに越した事は無いと思っています。