スペインで過去三週間の間に相次いで悲惨な事件が起きました。それは住宅ローンが払えず、銀行がマイホームのオーナーに対して立ち退きを強制執行している最中にオーナーがマンションから身を投げて、投身自殺を図るという事件です。

ウォールストリート・ジャーナルが伝えるところによると、これらの事件を契機にスペインでは立ち退き命令反対のデモ行進が湧きおこっているそうです。スペインの大手銀行はこのような世論の批判に応えて2年間、立ち退き命令を凍結すると発表しました。

スペインでは住宅ローン関連法案の改正の議論が今始まろうとしているところであり、この世論の激昂を背景に不利な法案が成立するとまずいという判断が銀行側に働いたのだと推察されます。

2012年第2四半期にスペインの裁判所は1万9千の立ち退き命令を許可し、2008年以降の累計ではその総数は20万3千の立ち退き命令が発せられています。


ウォールストリート・ジャーナルによると6月現在で6,440億ユーロあるスペインの住宅ローン残高のうち210億ユーロがデフォルトしているそうです。スペインの法律では住宅ローンが払えなくて銀行に物件を召し上げられた後も、マイホームのオーナーは債務を負い続けることになっています。因みにアメリカでは個人破産を宣言することで住宅ローン債務から逃れることが可能です。

このような強制力の強い法律になっているお陰で、スペインの銀行は住宅ローン・ポートフォリオの内容劣化を決算に反映させることに消極的でした。なぜなら「いずれ必ず貸した金は取り返せる!」と主張できるからです。問題は世論が大きく債務者への同情に傾き、法律そのものが変わってしまえば、「地獄まで借金を取り立てに行けるのだから、これは焦げ付き出は無い」という銀行側の主張は、空虚になってしまうという点です。

実際、スペインの銀行株は投身自殺問題がマスコミで騒がれ始めて以来、法律改正による焦げ付きローン激増のリスクを織り込みに行っています。

ゴーゴー融資で貸し込んだツケが、いま回ってきているというわけ。