日曜日のニューヨーク・タイムズにアップル(ティッカー:AAPL)のアップストア(App Store)向けにアプリケーションを開発するデベロッパー(開発者=エンジニア)たちに関する興味深い記事が出ていました。

アップストアとは、iPhone、iPadなどのアップル製品向けのアプリケーション(日本語ではアプリ、英語ではAppsと略されます)がダウンロードできるストアのことを指します。ニューヨーク・タイムズの記事によると、現在、アップルのデバイス向けに70万近いアプリが存在するそうです。

アップストアは2008年7月からサービスを開始していますが、その直後からiPhone人気にあやかってiPhoneむけのアプリを書く開発者が続々参入しました。このブームでアップストア向けのアプリを開発することを専門にする、ある種の自営業者が続々と輩出されました。(もちろん、サラリーマンをやる傍ら、サイドビジネスとしてアプリを書いている人も、沢山います)

アプリを販売して100万ドル以上の売り上げを上げた成功者の話が紹介される一方で、殆どアプリが売れず、空しい夢を追い続けているエンジニアの、いささか悲惨な生態も、ニューヨーク・タイムズの記事は追っています。

元サンマイクロシステムズのプログラマーだったイーサン・ニコラスの場合、2008年に、ちょっと小銭が稼ぎたくて子供向けの大砲ゲームを作り、アプリストアで売ったところ、$2.99のアプリが一日で1万7千もダウンロードされ、次の日、サンマイクロシステムズに辞表を出しました。彼は「僕の作ったアプリが売れたのは、全くの偶然で、単にちょうど良いタイミングに、たまたまそこに居たから当ったに過ぎない」と語っています。


その後、アプリストアのビジネスは続々と新規参入者が相次ぎ、競争が熾烈になりました。

ショーンとステファニー・グライムスの場合、証券会社レッグ・メイスンのIT担当者の仕事をしていたのですが、レイオフされ、暇な時間を使ってアプリストア向けのアプリ開発を始めました。しかし一日に20ドルくらいのダウンロードしかなく、これで生計を立てることはムリだということがだんだん明らかになってきました。

ニューヨーク・タイムズによると去年から労働統計のカテゴリー分けが変更になり、アプリ開発者の数字をより正確に把握しようという努力がなされています。またTechNetによると現在、グーグル、フェイスブック、アップルなどを含むもろもろのプラットフォームに向けてアプリを開発している人の数は46.6万人なのだそうです。

アップルの発表ではアップストアにおけるアプリ開発のビジネス機会が29.1万人の雇用機会を創出したとしています。

しかしフェイスブックに買収されたインスタグラムのような成功例は稀で、アプリ開発者の25%はアプリストアでの過去の全売上高を足し上げても$200に満たないそうです。
過去の総売上高が3万ドルを超えているアプリ開発者は全体の25%、100万ドル以上の売り上げを記録した人は全体の4%のみだそうです。

これらのデータから、アップストアでのアプリ販売でちゃんと生計を立てられている人の数は、案外少ないと説明されています。

P.S. ところで僕は10月25日から日本でも始まったアマゾンKDPも、上に紹介したアップストアと酷似していると考えています。つまり「本も、アプリだ」ということです。自己出版に関しては何度か書いている のでここでは繰り返しませんが、現在はキンドル・ストアで売られている本の点数が極めて少なく、コンテンツ不足の状態が続いています。それは何を意味するかと言えば、ちょうど2008年にアップルのアップストアでゴールドラッシュのようなアプリ開発ブームが起こったのと同様、これからKDPで自己出版ブームが起きるということを意味するのだと思います。その場合、最初の成功者はクウォリティーの面で最高品質の本を書いた作者ではありません。「ちょうど良いタイミングで、たまたまそこに居た奴」がラッキーするのだと思います。