「財政の崖」問題がくすぶっています。

今年の年末で期限が切れて、実際にアメリカが「財政の崖」を転げ落ちたら、誰も得する者は居ない……そう言われながらも共和党に支配されている下院と民主党のオバマ大統領ならびに上院は全く歩み寄りの姿勢を見せていません。

それどころか「俺の方がタフガイだというところを、見せてやる」式のパフォーマンスは、一層ひどくなる様相を呈しています。

それはなぜでしょうか?

先ず大統領選挙、議員選挙が終わったばかりなので、当選した人たちは「釣った魚にはエサをやらない」というメンタリティーになっている点が挙げられます。

納税者、事業主、投資家の心配を、政治家たちがスルーしている理由はそれです。

次に「大筋としては財政の崖は回避しないといけないけど、自分個人の利害としてはここでうんと気張って次の選挙のときオレは頑張ったとアピールできるようにしておかないと」というミミッチイ損得勘定が働いていることが指摘できます。

共和党のメンバーであれば「オレは断固として増税に反対した」と主張できるアリバイ作りが必要ですし、民主党のメンバーであれば「オレは庶民の既得権を守り通した」と主張できる実績を作っておく必要があるのです。

このように「お互いに歩み寄れば財政の崖回避という最適の解決法に辿りつけるけど、自分が先に歩み寄ろうとしたら、若し相手が歩み寄らなかった場合、自分だけが損する」という状況は「囚人のジレンマ」的です。

選挙後にオバマ大統領が示した財政の崖問題に対する提案は、去年までの議論から大幅に後退した、相手を突き放した条件でした。具体的には1.6兆ドルの増税、ならびに米国政府の債務上限を引き上げやすくするという、いずれも共和党が到底受け入れる事の出来ない提案です。

オバマ大統領は「社会保障制度から4千億ドルの削減をする」という歩み寄りの態度を示してはいますが、その中身は「病院や保険会社などのプロバイダーに泣いてもらう」という事の一点張りで、社会保障制度の受け取り側のカットは含まれていません。

共和党は大統領のこの提案を見て「囚人のジレンマ」で言うところの、「裏切りのシナリオ」が高まっていると感じています。

「最悪の場合、配当課税が43%になる……」、「どのタックス・ブラケットの納税者も、とんでもない増税に遭う」など、いろんな恐怖のシナリオが取り沙汰されているのは、このためです。(下はその一例)

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ビジネス・スクール的に言えば、この手の交渉事は和解に到達する前に対立をエスカレートすることが定石……そのシナリオから行けば、まだあと30日ある期限切れアウトの瞬間までに「ひやっ」とする場面に遭遇することを予想するのが、投資家としては当然の心の準備ということになります。