「相場は不安の壁をよじ登る」という格言があります。

これまで米国株式市場に対しては「財政の崖」が不安材料を提供してきました。マーケットは(もちろん、それは回避出来るさ)ということを織り込んで、上昇してきました。だから既に織り込まれている材料が「サプライズ、サプライズ!」でもう一度織り込まれるというのは、虫の良い話ではないでしょうか?

このため短期的なユーフォリアが終われば、投資家は頭を冷やし、これまでと同じ事、これまでとは違う事を整理しはじめると、僕は考えています。

まずこれまでと同じ事ですが、それは株式市場のバリュエーションが歴史的に安いということです。これは米国株式に当てはまるだけでなく、日本株にも欧州株にも中国株にも全てあてはまると思います。これは大きな強気要因です。

次に去年とは違う点に関しては、先ず米国では20年ぶりに裕福層の増税があるという点です。またキャピタルゲイン税については1987年以来、はじめて増税になります。

ひとつ前のエントリーで書いたように、今回の「財政の崖」回避は、共和党の「潰走」で成立しました。増税大反対を掲げて粘ることを期待していた裕福層にとれば、極めて不満の残る結果になってしまったのです。明日あたり、共和党寄りで知られる新聞、インベスターズ・ビジネス・デイリーは「吠えまくり」になるのではないかしら?

今回の「財政の崖」回避法案が米国のGDP成長率に与える影響については、もう少し考えてみないと、わかりません。でもGDP成長率の予想は下がって来ると考えるのが自然です。


なぜなら今回のクリスマス商戦がたぶんここ数年で一番悪かったのは、ほぼ間違いないからです。クリスマス商戦が竜頭蛇尾に終わった一つの原因は煮え切らない「財政の崖」議論にありました。それを見て消費者センチメントが悪化したわけです。

米国のGDP成長率は「3%台を睨んだ展開になる」と大部分の市場関係者が考えています。しかし場合によってはそれが2%台にとどまる、あるいは2013年前半は1%台になるということもシナリオとしては除外できないと思うのです。

(1%、2%、3%……どうだって、いいじゃないか?)

そう皆さんは思われるかもしれません。

でも2%と3%では大きくシナリオが変わってきます。とりわけドル/円のシナリオには大きなインパクトがある。つまり米国のGDPが3%台ならドル高シナリオは鉄板だということ。(僕はドル高派)

でも……若し米国のGDP成長率が2%台の下の方にズルッと後退するなら、またぞろコンペティティブ・デバリュエーション(競争的ドル安誘導)が頭をもたげて来るにきまっているからです。なぜって? それがアメリカのお家芸だからです。

日本は先の選挙以来、弱い通貨のメリットを「初体験」し、そのめくるめく快楽に有頂天になっていますけど(笑)、そんな事はアメリカやドイツ人は昔っから知り尽くしていた愉しみ。

あまり日本だけが快楽に酔っていると、そろそろパンチボウルが下げられるかも知れませんぞ(笑)