ウェブを通じたアンケート調査サービスの会社、サーベイ・モンキー(Survey Monkey)が巨額で、奇抜な資金調達を行いました。

先ず同社はグーグル(ティッカー・シンボル:GOOG)、タイガー・グローバル(ヘッジファンド)、アイコニック・キャピタル、ソーシャル+キャピタル・パートナーズ、ローレル・クラウン・パートナーズなどの投資家に対して4.44億ドルの株式を割り当て、資金調達しました。

加えてJPモルガン(ティッカー・シンボル:JPM)をシ団幹事とし、バンクオブアメリカ(ティッカー・シンボル:BA)、ゴールドマン・サックス(ティッカー・シンボル:GS)、サントラスト(ティッカー・シンボル:STI)から構成されるシンジケートローンで、3.5億ドルを借り入れました。

合計で7.94億ドルの資金調達をしたことになります。

今回の株式のイシュー価格から計算するとサーベイ・モンキーの非公開株のバリュエーションは時価総額にして13.5億ドルです。

また上記のように新しい株式を発行する一方で、昔から同社に在籍する社員や既存の株主の所有する同社株を買い上げることも実行しました。これは「自社株買い戻し」に相当する取引(*)です。そのねらいは新規株式公開(IPO)を待たずに従業員や古くからの株主が、持ち株を現金化する機会を与える点にあります。

スタートアップ企業が「何としても株式を公開せねば」というプレッシャーを感じるひとつの理由は、社員や既存株主が持っている非流通株への流動性の付与です。もうひとつの理由は長期に渡って非公開企業のままで操業し、その間に従業員への株式の付与で株主数が500名を超えてしまうと、証券取引法により株式の公開をしなければいけなくなる点にあります。離職した従業員からの株式の買い戻しは、株主数を減らす効果があり、非公開のままで居られる期間を伸ばす効果があります。

なお今回のディールでサーベイ・モンキーの発行済み株式数が何株になったのかは、よくわかりません。同社は2009年にスペクトラム・エクイティー・インベスターズとベイン・キャピタル・ベンチャーズが買収しました。そのとき、スペクトラムが送り込んだのが、ウェブ業界のベテランであるデイブ・ゴールドバーグです。彼はフェイスブック(ティッカー・シンボル:FB)のCOOであるシェリル・サンドバーグの旦那さんです。


なおスペクトラムは引き続き同社の大株主として残り、CEOのデイブ・ゴールドバーグも自分の持ち株比率を今回のトランザクションで引き上げています。その半面、ベイン・キャピタル・ベンチャーズの名前はプレスリリースには無いので、今回、上に述べたサーベイ・モンキーによる「自社株の買い戻し」で大きな利食いとなるキャッシュアウトをしていると思います。

さて、ここからは僕の意見ですが、今回のディールは米国のウェブIPO市場がいかに冷え込んでいるかを如実に示す事例だと思います。去年のフェイスブックのIPOの「失敗」で、ウェブ企業はその後に続いて株式公開することがとても困難になりました。

また公開市場における一般投資家の心変わりの早さや、株価の動きの予測困難さなどもウェブ企業の経営者が肝を潰す原因を提供してしまったと思います。(こんなことなら、ずっと非公開のままで居た方が、マシだ)というわけです。

サーベイ・モンキーの株主は、今回、キャッシュアウトしたベインにしても、新しく株主になった投資家にしても、フリー・キャッシュフローを根拠として、(この企業は幾らの評価を与えられるべきか?)という命題に関して強い自分の意見を形成できる、「オトナ」の投資家ばかりです。「オトナ」同時の取引であれば、キャッシュフロー・モデルに基づいた、フェアバリューの「評価の競り合い」は秩序だった、着実なものになります。もっとざっくばらんな言い方をすればアップラウンド(UP ROUND=資金調達するたびに、階段状に会社の評価が上がってゆく事→これが好ましい)を演出しやすいわけです。

サーベイ・モンキーの場合、「キャッシュフローが、読める」ビジネス・モデルになっています。同社は1999年の創業当初から黒字であり、口コミとフリーミアム・モデルでユーザーのすそ野を広げておいて、クラウドのSaaS(ソフトウエア・アズ・サービス)、データ分析、エンタープライズ向けサービスなどで、しっかりした課金するという手法を確立しています。これは今回のように多額の借金をする場合に返済メドが立ちやすいことを意味します。

折からの超低金利環境で今回のような借入をする金利環境は良好であると言えます。

サーベイ・モンキーのディールはNASDAQをはじめとする取引所、IPOを引き受ける投資銀行、投信や個人株主などの投資家……それらすべてに対するdisりであるとも受け止められます。

【参考】下はサーベイ・モンキーを使用して去年の11月に行った、マーケットハックのアンケート調査結果です。

Market Hack読者アンケート調査 結果


(*)=カッコ付きにしたのは、ディール前とディール後の発行済み株式数の推移がリリースで明らかにされていないため→つまり憶測を含んでいます。