興味が持てない2つのニュース」という記事の中でアルジェリアの天然ガス・プロジェクトへの過激派襲撃事件に「興味が持てない」とちきりんさんが言っています。

興味が持てない理由は、ちきりんさんによれば「そんなこと議論してても、しゃーないでしょ」ということらしい。

で、僕としては彼女の議論に大いに賛成できる部分もあるし、その半面(あーあ、この人、ぜんぜん物事がみえていないな)と思う点もある。

先ず賛成する部分は、どんなに安全対策やろうが、戦争をしかけるような勢いで向かってくる人に対して立てられる対策はないという指摘。それに比べて、ニュースの報道はあまりにもヌルい。

これは僕も100%同意します。

先ずプラントはかなり厳重に守られています。一例として僕が昔クウェートに居た頃、ある日、レバノン(クウェートからは、かなり離れた国です)で米国海兵隊バラック爆破事件というのが起こり、ダイナマイトを山積みにしたトラックの神風攻撃で200名を超える海兵隊員(精鋭です)が一瞬のうちに爆死した事件がありました。

世界でたぶん一番強い兵隊さん達ですら、捨て身で攻撃してくる相手にかかれば、こんなものです。

で、この事件が報じられるや、僕の仕事場に戦車が来たんです。

「なんだなんだなんだ、この戦車達は!?」

あれよあれよという間に、プラントの正門付近に戦車の砲列が並んだのを見て、改めて自分の勤めている施設が戦略的資産(strategic asset)なんだなーということを痛感しました。

さて、プラントそのものはそんな感じで要塞のように守られているけれど、セキュリティが手薄な場所もある。それが労働者のキャンプです。

プラントでは何百人、何千人という人たちが働いており、彼らはプラントの近くに設営されたキャンプに住んでいます。幹部社員なら米国の郊外の住宅のような設備だろうし、土工や溶接工なら強制収容所のような厳しい住環境の施設でしょう。大体、国籍別、職種別、階層別にそういう施設に収容されるわけです。

で、こちらの方は普通、厳重には警備されていません。「ひとの命は尊いのに、なぜ厳重にしないのだ?」という意見があるかも知れないけれど、その最大の理由は「人は、爆発しないから」です。天然ガスのプラントは、天然ガスという可燃物を扱っているので、ちょっとでもプラントのご機嫌が斜めになると、大爆発する危険があります。逆に言えば、テロも仕掛けやすい。だからネズミ一匹も入らないように、神経を配るわけです。

それに比べれば、どうしてもキャンプの方のセキュリティは手薄になりがち。

今回、過激派はそこのところを巧く利用して、先ず労働者のキャンプを襲撃し、労働者にダイナマイトのついたジャケットを着せ、彼らを盾に、「プラントへの道をあけろ!」という風に脅したわけです。これだと、おいそれと狙撃すらできない……。

「話せば、わかる」式の日本の新聞の論調が、全く現場のリアリティから乖離したものであることは、ここまで読んで頂ければ、わかって頂けると思います。

なお実名報道すべきかどうかについては、遺族がそれを望むのであれば実名報道すれば良いし、静かにしておいて欲しいということを希望される場合は、しなければよい。つまり一律にやる理由はなにも無いということです。むしろメディアの使命は、事件の背景のコンテクスト(文脈)を補うという点にあるのではないでしょうか?

さて、ここからは、なぜ僕がちきりんさんの無関心に腹を立てるか?という点について書きます。

最近、円安ですよね? それも「ひょうたんから駒がでる」くらい、見事なほどの、円安。

で、アベノミックスうんぬんが言われてますけど、公式に表明されている政策は「なんだ、これっぽっち?」というような、腰の座って無いリフレ策です。(この程度で、相場がうごかせるのかぁ)と思っている投資家も多い。

では何故そんなヌルい政策でも、ぐわんぐわんに相場が動いているのでしょうか?

それは今の日本のマクロ統計の数字自体にすごいリアリティーがあるからです。そういう言い方でわからなければ、貿易赤字が醜悪だということです。

で、貿易赤字の一因は輸入にしめるエネルギーの比率が高いからなのです。もっと言えば去年、日本は8,700万トンの液化天然ガス(LNG)を輸入している。六兆円と言われる液化天然ガスの輸入代金は、一年前に比べて+25.4%です。日本の総輸入の中にしめるLNGの割合は8.5%です。

つまりLNGは国運を左右する大きな輸入項目であり、政治のリーダーや実業界のリーダーは目をかっ開いて、その動向を注視しなければ、日本はたいへんなことになってしまうのです。

アルジェリアの場合、輸出ターミナルは地中海になりますので日本向けではありません。
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だけど僕がなぜモザンビークの話とか米国のシェールの話とか、カナダのキティマットにエロいサルーンを開業すれば良いとか、そういう話をクダクダ書くかといえば、これが皆さんの懐を電気代値上がりというカタチで直撃しかねないリアルな話題だからなのです。アルジェリアで働いている日揮の皆さんも、そういうコンテクストで見なければいけないと思うのです。

その点で、ちきりんさんはマクロで起こっている事が、自分の暮らしにどうつながって来るかが見えていないわけです。彼女のアタマの中で点と線がつながってないから無関心で居られるというわけ。