アベノミクスが言われ始めてから、連日、日本の株式市場が上昇しています。(投資なんて、やってないし、そんな余裕のおカネもない……第一、知らない事、わからない事が多すぎる)そう感じている方も多いと思います。

Market Hackはマーケット全般に関心を持つプロならびにセミプロ級の投資家の方々によく読まれているブログメディアです。(読者属性に関しては去年11月に実施したアンケート調査の結果をご覧ください)

編集長として僕の懸念は「Market Hackの敷居がどんどん高くなって、これから投資家を目指す若い読者にとってとっつきにくいサイトになってしまうのではないか?」という点です。

そこで株やFXの初心者の方が読んでも理解できるし、投資を理解する上ですぐに役に立つ、実用的なヒントばかりを集めたコラムをスタートしたいと思います。今、皆さんが読んでいるこれが、その第一回目です。

【これからは普通預金ではダメだ】
僕が日本の証券会社を辞めてアメリカに来たのは1980年代の終盤でした。当時は日本はバブル景気の真っ只中で、日経平均は4万に迫ろうという勢いでした。しかし皆さんもご承知のようにバブルが弾けて、それ以来、日本株は右肩下がりの長期トレンドを描いてきました。

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株だけでなく、土地の値段も下がり、お給料もなかなか上がらない状況が続きました。正社員が派遣社員にどんどん代わって行った経緯を考えると、われわれの給与にすら下落プレッシャーがかかっていたとも言えると思います。このような状態を「デフレ的だ」と言います。

デフレ的な環境下ではキャッシュが強いです。なぜなら株や土地に変えた途端に株価や地価が下がって損を蒙るからです。そのような状況下では、雀の涙のようなわずかばかりの利子しか付かなくても、銀行の普通預金に預けておくのが正解です。

つまり皆さんが株式投資などの投資活動を一切して来なかったのなら、それは恥ずかしいことでも何でもなくて、実は「勝ち組」だったとすら言えるのです。


それではなぜこれからは普通預金ではダメなのでしょうか? それはデフレ的な環境を、そろそろ是正した方がいいんじゃないか? という民意のコンセンサスが醸成されつつあるからです。

こう書くと(ちょっと待てよ、そんなのコンセンサスでもなんでもないぞ!)と反発する読者も多いと思います。でもデフレ脱却を掲げた去年12月の総選挙で自民党が圧勝したことは、与党と野党の議席数が接近して、その結果、「ねじれ議会」のような状況が当たり前になっている欧米の多くの国々と比べると、明らかに一線を画す展開でした。言い換えれば、外国人の目からみれば、日本は挙国一致でデフレの駆逐に取り組む態勢に入りつつあると映っているわけです。

(デフレの駆逐と、普通預金ではダメというのは、どう関係があるの?)

と皆さんは思うかも知れません。それを説明します。デフレとは株や不動産やモノの値段が広範に下がるような状況を指します。その逆はインフレで、株や不動産やモノの値段は広範に上昇します

それは例えて言えば「いままで100円出せば買えていたものが、102円出さなければ売ってくれない」という状況です。この2円の差が「2%のインフレ」だとザックリ考えてもらってOKです。昨日まで100円だったマグカップが、今日から102円に値上げしたという場合を考えてみると、マグカップ自体は、ひと晩寝た後でパワーアップしたわけでも何でもありません。マグカップは、あくまでもマグカップなのです。それが2円余計に出さないと買えなくなったということは、マグカップの価値が上昇したのではなく、おカネの価値が下がったことに他ならないのです。

この「おカネの価値が下がった」という認識はとても重要です。なぜならおカネの価値がじりじり目減りしている状況下ではこれまで正解なスタンスであった「普通預金にしておく」という戦法は、もはや正解ではなくなるからです。

すると自分の財産の価値が目減りするのを何らかの方法で未然に防止する必要が出ます。不動産の購入は誰もが真っ先に考えるポピュラーなやり方でしょう。ただ、いざ不動産買え!といっても、不動産購入は大きな金額の取引となる場合が多いですから、おいそれとアクションを起こせる事ではありません。だから次善の策として皆の資金が株に向かったというわけです。つまり昨今の株高はおカネの価値の目減りに対する警戒心がUPした結果としてもたらされた現象なのだという捉え方もできるわけです。

【should ではなくisに基づく投資】
なお、Market Hackは投資のサイトなので、常に何かに投資しておくべきだということを主張するサイトに違いないと思う読者がいらっしゃるかもしれませんが、そういうことはありません。普通預金がいちばん良い時は、普通預金に限りますよと素直に言います。

もっと言えば、「かならず株に投資しておくべきだ」とか「かならず不動産に投資しておくべきだ」とか「かならずインデックス投資がよい」というような、shouldに基づく主張は、Market Hackはしないということなのです。そうではなくて「いま、こうなってますよ」という観察、換言すればisに基づく問題提起をしてゆくのが、このサイトの特徴なのです。状況は刻々と変わるわけですから、それに応じて意見が変わるのは、当り前です。