今日、キプロス支援が決まった後で、ユーログループ(ユーロ圏財務省会合)のダイセルブルーム議長(オランダ蔵相)が「今回のキプロスの銀行の債務再編は、今後欧州で銀行が経営危機に陥った場合、ひとつの雛型になるだろう」と発言しました。

欧州ならびに米国のマーケットはこれを嫌気し、値を消しています。

後にダイセルブルーム議長の側近が「キプロスは特殊なケースだ」とあたかも先の発言を打ち消すようなコメントをしたため、市場参加者はさらに混乱し、ダイセルブルーム議長の無能をなじりました。

ただダイセルブルーム議長ならびに欧州連合が、今後ユーロ圏で銀行の経営危機が露見した際に取るべきだとしているアプローチは、この一連のコミュニケーションの拙さ云々に関係なく、極めてハッキリしています。それは:

1.銀行救済にあたっては、ユーロ圏の納税者のお金は投入しない
2.問題を起こした銀行を再編する際には、銀行の資本構成の優先順位に従って、整然と処理を進めてゆく
3.それはつまり株主→ジュニア債保有者→シニア債保有者→預金者という順番で犠牲になるということだ
4.キプロスのケースでは株主、ジュニア債保有者、シニア債保有者という三つのレイヤーがきわめて薄っぺらだったので、損を埋め合わせするには預金者(=それは銀行に預金というカタチでおカネを貸している債権者にほかならないわけだが)に犠牲になってもらう他、無かった


ということです。

3.に示された四種類の債権者を飛び越して、欧州連合が納税者のお金を投入することで、銀行の放漫経営の尻拭いをすることは、しない……これは好き嫌いの問題はあるだろうけれど、ひとつピシッと筋の通った議論です。

「どうせEUが尻拭いするだろう」とか「どうせ預金保険があるから」という気持ちから、投資家や預金者はこれまで、あまりに能天気に銀行を信用し過ぎていたのです。

実際には歴史を紐解けば米国でも預金保険がちゃんと作動しなかった例はゴマンとあります。

そもそも預金保険がモラルハザードを生む原因となるということは、預金保険制度が出来た当初から、ずっと議論が繰り返されてきた、いわば永遠の命題なのです。

若し預金保険が本当にちゃんと機能することを望むのであれば、欧州における銀行統合(バンキング・ユニオン)をどんどん進めて、より大きなプールの中で破綻案件を処理できるような体制作りを急ぐべきです。

今回のキプロスの問題は、預金保険を融通し合い、その代わりに欧州中央銀行(ECB)に監督・監視を一任するという体制が整う前に起こってしまった、いわばアンラッキーなケースです。

だからダイセルブルーム議長の発言にケチをつけるヤツは金融リテラシーが無さ過ぎるし、ダイセルブルーム議長の側近の発言は、ボスの発言と全然矛盾している部分は無いのです。