ジョージ・ソロスの主宰するINETは財政学、テクノロジー、雇用、機会平等などが相互にどう働きかけているのかを解明ことを通じて「役立たず」になっている経済学を刷新しようとする試みです。

今年で四年目のこのフォーラムは新しく元FSAのロード・ターナーを迎えて、イデオロギー的なバックボーンを得たと評することができると思います。そのロード・ターナーの主張は、きわめてラジカルです。下は香港で開催されたINETのカンファレンスでの彼の基調演説ですが、かなりロックンロールしています。



【おもな聞きどころ】
18分01秒:シカゴ学派のヘンリー・サイモンズ、初期のミルトン・フリードマン、アーヴィング・フィッシャーらは大胆にレッセフェール(laissez-faire自由放任)的な二つの提言を行った。

まず財政政策というものは、測り知れない不安定な状況に時として晒される。とりわけ銀行業務はそういう変動に脆い。だから銀行業は厳格に監視、監督されるべきであるのみならず、(従来の発券銀行的なものは)廃業させるべきだと主張した。

彼らは準備銀行が割拠するような状況は、あってはならないと論じた。それらの銀行が勝手に、私的に、自ら信用を創造できるような状況を許した事は間違いだったと断定した。

貨幣の創造は独占的に国家がやるべきことだ。連邦準備銀行だけが100%の信用の創造を許され、マネタリーベースがマネーサプライでなければならないと主張した。これがラジカルなアイデアの一つ目だ。

もうひとつのラジカルなアイデアはミルトン・フリードマンの1948年の論文に書かれていたことだが、債務をファイナンスするために新しくマネーを刷ることはタブーではなく、むしろ奨励されるべきだということだ。債務ファイナンスのためにマネーを刷ってはいけないということは欧州中央銀行(ECB)の定款に謳われていることなので、これは現在の欧州の考え方とは正反対だ。フリードマンは財政赤字を常に100%、新しく創造されたマネーでやりくりすべきだと主張した。

44分00秒:ひとたびデフレ的状況に陥ると、それをなんとかしなければいけない。リチャード・クーのバランスシート・リセッションの考察が参考になる。企業や家計はバランスシートを何が何でも立てなおすぞという態度になり、金利水準に関係なく、レバレッジを減らすことだけを考えるようになってしまう。こうなると誰かがステップインしてこの状況を是正しなければいけないので、政府が財政赤字をこしらえながら景気をささえるしかなくなる。

この処方の問題点はストック効果とよばれるもので、政府が借金だらけになることだ。1990年にGDPの60%だった日本の債務は現在200%以上になってしまっている。
これが日本の歩んだ道だったが、リーマンショック以降は英国、米国、スペインなども同じことが起きている。これは1930年代型のデフレ問題を作る可能性がある。

マクロ政策のレバーと、それがもたらす効果について、綿密に再検討してみる必要がある。
名目GDP(見かけ上の需要の総和)は価格の上昇か、ないしは生産の増加のどちからによってもたらされる。

OPMF(Overt Permanent Money Finance)を提唱したい。これは財政政策と金融政策のコンビネーションにより中央銀行のマネーで、財政赤字を恒久的にファイナンスすることを指す。

需要が不十分な状況には必ず解決法がある。

1時間0分18秒:日本の国家負債は通常の方法では返済されない。日本政府が稼いだ収入から借金を返済すると皆さんが思うなら、その可能性はゼロだ。この負債はマネタイズドされるかリストラクチャされる他ない。それは高インフレによってオフセットされる可能性がある。それはつまり日本国債を買っている人はインフレ率に照らして逆ザヤになることを意味する。
技術的には必要なだけOPMFを行うことは難しくない。むずかしいのはOPMFを実行するとき政治的な圧力がかかって「もっと、もっと!」と国民が要求するようになることだ。適当な時期に切り上げるのは、政治的には至難の業だ。これが財政赤字をお金を刷ることでファイナンスすることがタブー視される本当の理由なのだ。