黒田バズーカの号砲を聞いて、投資家は先ず日本株になだれ込んでいます。これは、当然。

理屈で考えると、その次にターゲットにされるべき資産は米国財務省証券あたりでしょう。

アマノジャクの僕としてはイタリア国債なんかもセクスィだと思っている……

このへんまではMarket Hackに書いてきたわけだけど、「黒田バズーカと新興国株式の関係って、どうなのよ?」という事が気になる人も多いと思うのデス。

そこで今日はこの点に関して僕の私見を述べます。

まず新興国の債券や株式は、機関投資家にとってメインのアセットクラスではありません。
だからザ・セイホがいきなりここへ資産を移したりは、しない。

その第一の理由は受け皿が小さすぎるからです。

でも日本の個人投資家のカネの一部は新興国の債券ファンドや株式ファンドに流れてもおかしくないと思っています。

下は国際通貨基金が最近発表した『世界金融安定報告書』の中にある、リスク・アセスメントのダイヤグラムです。

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前回の報告書に比べて、投資家のリスクアペタイト(Risk appetite)と金融・財政政策(Monetary and financial)面でのリスクは増大しています。

その半面、新興国(Emerging markets)のリスクは前回より減っているし、IMFの6つのリスク分類のうちでは、マーケット&リクイディティ・リスクと並んで、最もリスクが低いという査定になっています。

これには色んな理由があるけれど、乱暴な言い方をすれば一般に新興国の金融・財政政策の方が先進国の曲撃ち(shooting from the hip)的な政策(=黒田バズーカは、その典型)より、ずっと手堅いことが関係しています。

リーマンショックの直後に中国政府は「世界を救うのは、オレだっ!」式の中二病的なノリで既に余っているインフラ投資を、更に上乗せし、金融を緩めるという明らかな愚策に出たことは皆さんの記億に新しいと思います。

それ以降、中国は悔い改めています。下のグラフにあるように、今はムチャなことは、やっていません。

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強いて言えば投資家との間で利回りを「握る」、信託商品(Trust loans)の野放図な拡大に、手を焼いている点だけが、不安要因です。

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でも、それ以外はマトモ。

で、アル中状態の世界の投資家は、そういうシラフな中国は「おもしろくない」として嫌っているわけです。だから中国を代表するETF、アイシェアーズFTSEチャイナETF(FXI)も鳴かず飛ばず。

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鉄鉱石の輸出などを通じて中国経済との連想で語られることの多いブラジルも、上の実質信用成長率のグラフで見たように、ムチャな事はやっていません。だから株式市場の参加者は、これを不服としている(笑)

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インドの場合、実はこっそりとゆるゆるにしている。(上の実質信用成長率のグラフが、最近、ぴくんとuptickしている点に、注目)

だから去年あたりからインドの株式市場のパフォは、中国やブラジルより良い。

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で、僕はこの騰がり方はロー・クウォリティなラリーだと思っています。

下は新興国の実質政策金利のグラフです。これは政策金利からインフレ率(過去2年間のローリング・アベレージを使っていると思います)を引き算したもの。

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インドの場合、明らかにガードが甘い。

もっとも、詰めが甘いという話をすれば、ユルフンな金利政策をしている国は、他にも沢山ある(笑)

南アやトルコなんてその例だし、タイランドも最近、ディシプリンに欠ける面がチラホラ出ている。このところ人気のフィリピンも、この面では危なっかしいと思います。

で、株式市場のパフォを見ると、そういうユルフンな国ほど、パフォが良い(笑)

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もちろん、今は世界的インフレになるリスクは低いわけだけど、若しインフレになったら、このへんの国はイチコロでオダブツでしょ。

マーケットのトレンドは、簡単にはリバースしないので、アセアンはじめとした非BRICs新興国のアウトパフォーマンスは、しばらく続くのかも知れません。

でも投資家としてわきまえておくべきことは、去年くらいまではアセアン諸国の金融・財政政策は手堅かったけど、今はだんだんペケになっているということ。

その意味ではむしろBRICsの方がちゃんとしています。