今日、アメリカの保守系シンクタンクヘリテージ財団が『The Fiscal Cost of Unlawful Immigrants and Amnesty to the U.S. Taxpayer(不法移民への市民権付与が国庫に与える負担)』と題されたレポートを発表しました。報告書の全文はココで読めます。

ロバート・レクターとジェイソン・リッチワインによるこの報告書では「不法移民に市民権を付与することで、アメリカの納税者の負担は6.3兆ドルも増える」と結論付けています。

これは不法移民に市民権を与えることに反対している共和党を中心とする議員さん達にとっては「美しい調べ」です。

同レポートは現在、米国に滞在している不法移民の多くは学歴の低い低所得者だから、彼らに市民権を与えてしまうと税収は余り取れない一方で、もろもろの社会福祉サービスを提供する負担は増えると分析しています。

一定の仮定の下で、この結論はたぶん正しいと思われます。その仮定とは「不法移民の合法化が経済成長に与える影響は、無いとする」というものです。

ただ、1,100万人もの新しい人口が、はじめておおっぴらに運転免許証を取得し、銀行口座を開設し、地下経済からオモテの経済の統計データに捕捉されはじめるとすれば「それがGDPに与えるインパクトがゼロ」というのは、中学生でも間違っているとわかります。

実際、ウエルズファーゴ(ティッカー・シンボル:WFC)をはじめとするメガバンクは、このマーケットを次の重要な成長の源泉だと捉えており、新しく合法化される新市民を取り込むべく着々と準備を進めています。

そんなわけで今回のヘリテージ財団の報告書に関しては、それが公表される前から「このレポートの前提は、間違っている!」というdisりが聞こえてきていました。

むしろ今回のレポートで打撃を受けるのは、次期共和党大統領候補と目されるマルコ・ルビオ(=彼はラテン系)などの共和党のヤング・リーダー達です。


去年の大統領選挙でミット・ロムニー候補があえなく敗退した理由として、共和党は若い有権者、ならびにラテン系の有権者の心を捉えることに失敗したという反省があります。

従って、これらの層へのアプローチは共和党そのものにとって重要課題です。将来のアメリカの人口動態の推移を予想すれば、共和党の劣勢は、一層悪化することにもなりかねないのです。

こうした危機感から、普段なら共和党員から拍手喝さいで迎えられるヘリテージ財団の報告書は「困ったことしてくれたな」という当惑をもたらしています。一方、民主党からすれば、メシウマです。

さて、米国の政党政治の思惑や駆け引きはさておき、ノンポリのMarket Hackとしては今回のヘリテージ財団のレポートは精読に値する労作だと感じています。なぜならこのグループが地下経済のままにとどまるか、それとも表の経済に捕捉されるかにかかわらず、このグループこそがアメリカの成長の源だからです。

これは言ってみれば、アメリカの国土の中に、目に見えない新興国が内包されているようなものです。

【Key numbers】
不法滞在者数:1,150万人
うち2000年以降に入国した者:45%
年齢:18歳以下(11%)、18~24歳(13%)、25~34歳(35%)、それ以上(41%)
出身:メキシコ(60%)、その他中南米(24%)、アジア(11%)