ヤフーのタンブラー(Tumblr)買収でFacebookやTwitterなどに代表されるソーシャル・ネットワーク企業間におけるバトル、とりわけアドダラー(広告料)の取り合いが激しくなると予想されます。

まずヤフーのタンブラー買収は、単に「オールド・ウェブメディア・カンパニーが若者向けのブログ会社を買収した」という理解では十分ではありません。

なぜならタンブラーには強いソーシャル機能があるからです。

むしろタンブラーはFacebook、Twitter、LinkedIn、LINEなどのソーシャル・ネットワーク関連企業のひとつと捉えられるべきです。

既に世界最大のペービジューを誇るヤフーにとって、なぜこれらのSNSが脅威なのでしょうか?

それはユーザーがSNS上で費やしている時間の多さです。

我々消費者の時間は限られています。だからSNSで少しでも余計に費やされた時間は、他のサイトで使える時間が減少することを意味します。

またコンテンツの供給自体が増えると、ひとつのニュースやコンテンツに対してユーザーが払える注意が減ります。言わばアテンションの希少性が生じるわけです。

さらにユーザーのアテンションは自分と関係ない一般ニュースではなく、自分の友人や家族、知人や有名人が気にかける(ケアする)ニュースを、自分も消費したいと感じます。つまりコンテンツのシェアが、コンテンツのディスカバリーの経路を変えてしまうのです。

これは言い換えれば、ヤフーのトップページのブックマークからヤフー・ニュースへ行き、そこでニュースを見るやり方(=従来のやり方)がだんだん廃れ、Facebook、Twitterなどの友達のアップデート、ないしはストリームで「シェア」されたニュースのリンクにクリックすることでニュースを読む(=新しいやり方)ことが増えるということです。


ユーザーはニュースを「シェア」することで「自分はこんなニュースに関心や意見を持っているんだよ」ということを仲間や家族に伝えるわけです。これは自分がどんな人間であるか(who you are)をシグナルしているに他なりません。これはシグナル効果です。

昔は「私はグッチのバッグを持っている」とか「僕はベンツに乗っている」ということで自分のセンスや富をシグナルしていたわけですが、新しいカーストは物凄いスピードでSNSを核として再構築されつつあるのです。その整理体系を提供するのがFacebook、Twitterなどのプラットフォーム・カンパニーなのです。

しかもユーザーにとってキラー・コンテンツは「ロイター通信」とかのニュースのブランドではなく、「気になるあの子が、書いたひとこと」になってきます。ニュースは、あくまでも話題提供のキッカケであり添え物にしか過ぎなくなるわけです。

しかもユーザーがUPする記事(=ユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ)の量は、ニュース通信社やウェブ会社が配信できる記事の量よりはるかに多く、遥かに更新頻度が高く、遥かに多い回数、RT(リツイート)、ないしはシェアされます。すると同じニュースが何度も別々のユーザーによって表示、シェアされ、そのニュースの重要性が補強されるのです。このパーシスタンス(=タイムライン上にしぶとく残るちから)もメディア企業や広告主が気を付けて見守っている点です。

するとコンテンツ企業としてのヤフーは、従来型のプロが作ったコンテンツを、大量に、多くのユーザーに流しているのだけれど、だんだんユーザーはSNSで時間を過ごし、ヤフー・コンテンツに使ってくれる時間が減るし、ブックマークからヤフーのトップページに来てくれる割合は減るし、ニュース全体の集合ではなく、単体のニュースがユーザーによってピック(取捨選択)されるし、注目を集めたコンテンツは何度も繰り返し表示され、それだけがしぶとく残るという現象を克服しなければいけなくなります。これはだんだんハードルが高くなる「無理ゲー」の世界です。

タンブラーはソーシャル機能があり、しかもダッシュボードを通じて、いろいろなコンテンツをユーザーが高度にカスタマイズしたカタチで取り揃え(=オーガナイズ)、シェアできます。しかも広告をネイティブなかたち(つまりコンテンツとして)で流すことが出来ます

これはスマホ時代には欠かせない機能です。

今後、広告主がユーザーのアテンションを勝ち取ろうと思うと、Facebookならタイムライン上、Twitterならストリーム上、と言う風にメインの表示箇所に、他のユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツとまったく同じ感覚で、広告を出してゆかねばならないのです。

これは広告出稿者が、いちユーザーと同じ立ち位置になることを意味します。言い換えれば「広告代理店のブロガー化」です。

FacebookやTwitterは「ブロガー化した広告代理店」にとっては極めて不満の残るユーザー・ジェネレーテッド広告しか作れません。なぜなら後付け(after thoughts)でプロモーションのための機能が追加されたからです。

タンブラーのダッシュボードは、今日のカンファレンス・コールの中で「いくぶん、アンダー・ユティライズ(=稼働率が低いこと)されている」と説明されました。

結論として、ヤフーはタンブラーを買収することで「スマホ+ソーシャル」の経路におけるプレゼンスを確保したと言えます。既にヤフーは大きな広告営業(アド・セールス)部隊を持っており、広告主とのコンタクトがあります。従ってFacebookやTwitterやLINEが経験している広告営業の面での「帯域不足」の問題に悩まされる心配はありません。


(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief, Market Hack)

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