The Billionaire's Apprentice: The Rise of The Indian-American Elite and The Fall of The Galleon Hedge Fund
The Billionaire's Apprentice: The Rise of The Indian-American Elite and The Fall of The Galleon Hedge Fund [ハードカバー]


★★★★☆
評者:広瀬隆雄

元ウォールストリート・ジャーナルの記者、アニータ・ラガヴァンの『ザ・ビリオネアズ・アプレンティス』は、マッキンゼーのマネージング・ディレクター、ラジャト・グプタが、ヘッジファンド、ギャレオンのラジ・ラジャラトナムとインサイダー情報を交換し合う怪しい関係に入ってゆく様子を描いた本です。

本書は、マイケル・ルイスの『ライアーズ・ポーカー』、ケン・オーレッタの『ウォール街の欲望と栄光』、ジェームズ・B・ステュアートの『ウォール街悪の巣窟』などに匹敵する労作だと思います。

Market Hackの読者にとって、なぜこの本が重要なのでしょうか?

それは今のアメリカのビッグビジネスを動かしているのは、実はWASPだけではなく、アジア人もコーポレート・アメリカのてっぺんのところで活躍しているという事実を、本書通じて知る事ができるからです。

ラジャト・グプタはインドのIITを優秀な成績で卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールで、トップ5%の学生に贈られるベーカー・スカラーに輝いた秀才で、コンサルティング会社、マッキンゼーのトップに上り詰めた、言わば「貴公子」のような存在です。肌の色やコネではなく、実力で彼がトップに上り詰めるさまが描かれています。

一方、ラジ・ラジャラトナムの方はペンシルバニア大学ウォートン校を卒業し、チェース銀行に入行します。まるで金融電卓のように暗算が得意なので「HPラジ」というあだ名をつけられます。しかし株式市場が大好きで、お堅い銀行の仕事は性に合わず、ニーダムという中堅証券のアナリストに転身します。そこで得たシリコンバレーの人脈を生かし、ヘッジファンド、ギャレオン・グループを立ち上げ、それを巨大なヘッジファンドへと育てて行くわけです。

本書はこんにちのシリコンバレーやウォール街やコンサルティング業界が、どれだけ移民のネットワークにより駆動されているかを知る、貴重な資料と言えます。これらの業界に就職したいと考えている学生さんに読んで欲しい一冊。

なお本書はアニータ・ラヴァガンの処女作だと思います。彼女は僕がNYの投資銀行に勤めている時に市場番の記者をやっていたので、何度かトレーディング・ルームに遊びに来ました。彼女自身、インド系マレーシア人(?)だと思います。だからアメリカの花形のギョーカイが、アジア人によって占拠されつつある様子を描き出す語り部としては、きわめてふさわしい女性だと言えます。