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米国の最高裁判所が人体から抽出分離した人間の遺伝子にパテント(特許権)を付与することはできないという判決を下しました。

本件は「分子病理学協会対ミリアッド・ジェネティクス(Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics)」と呼ばれるケース(訴訟案件)で、ミリアッド・ジェネティクス(ティッカー・シンボル:MYGN)が抗がん剤の研究に際して人体から抽出分離したDNAシーケンスにパテントを取得したことに対して分子病理学協会が「それは無効だ」と主張した論争を指します。

これに先立ち、米国特許庁(U.S. Patent Office)はDNAシーケンスを組成物(composition of matter)と認定してパテントをイシューしました。組成物の厳格な定義は下の通りです:

A composition of matter is an instrument formed by the intermixture of two or more ingredients, and possessing properties which belong to none of these ingredients in their separate state. ...The intermixture of ingredients in a composition of matter may be produced by mechanical or chemical operations, and its result may be a compound substance resolvable into its constituent elements by mechanical processes, or a new substance which can be destroyed only by chemical analysis.


ミリアッド・ジェネティクスは1994年に創業されたバイオ/ゲノム・ベンチャーで、乳がんのリスクを孕む遺伝子(略してBRCA1と言われています)を突き止める研究をしました。そして同社の創業者、マーク・スコルニックがユタ大学、NIH、カナダのマギル大学などと共同してBRCA1に関する論文を発表し、パテントを取得したわけです。

ミリアッドは乳がん因子に関する診断テストを行うたびにフィーを貰うというビジネス・モデルでした。
(なおアンジェリーナ・ジョリーが乳腺切除を決断したのも、ミリアッドのDNA診断テクノロジーのおかげです)

しかしDNAシーケンスに特許が認められてしまうと、研究者は知らず知らずのうちにパテントを侵害してしまっているのではないか? という不安を持ちながら研究しなければいけなくなってしまいます。これは創薬のための研究開発を阻害するし、患者にとっても研究が遅れるために好ましくありません。

そこで分子病理学協会ならびにコロンビア大学、ニューヨーク大学、イェール大学の研究者たちがミリアッド・ジェネティクスを相手取って、訴訟を起こしたというわけです。

今日の判決でクレランス・トーマス最高裁判事は「ミリアッドが抽出分離したのは、自然界に存在するものであり、パテント申請できない」としました。

最高裁シラバス「Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics」

重要なポイントとして、最高裁は「ただし研究室で合成されたDNA分子(=cDNA)は、パテントを申請できる」としました

これはミリアッド・ジェネティクスにとっても、原告の分子病理学協会にとっても、そして患者にとってもメリットのある判決でした。

患者の観点からすれば遺伝子テストを受けやすくなるし、分子病理学会に代表される研究者にとってみれば訴訟される心配なく研究を行うことが出来ます。

今回の最高裁の判決は長く垂れ込めていたDNAシーケンシングに関する不透明感が晴れたことを意味し、今後の研究、創薬活動を活発化する可能性があります

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【略号の説明】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たりキャッシュフロー
SPS一株当たり売上高


(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief, Market Hack

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