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ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)は1852年にヘンリー・ウエルズとウイリアム・ファーゴの二人によって始められた会社です。

同社は1849年のゴールドラッシュの直後に、金塊や郵便などを輸送するエクスプレス(急便)の必要性が出たことに目を付けて始められました。

同社のステージコーチ(駅馬車)はそれ以来、信頼とフェアな取引のシンボルとなっており、今日でもウエルズファーゴの支店にゆくと、ステージコーチの絵が架けられています。

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このようにウエルズファーゴはもともとサンフランシスコを拠点とした銀行でしたが、1998年にミネアポリスのノーウエスト銀行と合併しました。

ノーウエストは米国でも屈指の住宅向け貸付を得意とする銀行で、この合併に際しても先導的立場にありましたが、ブランドネームとしてはウエルズファーゴの方が名前が通っていたので、こちらを存続ブランドとしたわけです。

そして2008年のリーマンショックの直後にウエルズファーゴはノースカロライナ州のシャーロットに本社を置くワコビア銀行を傘下に収めました。ワコビア銀行も南部では堅実経営で知られる銀行でしたが、サブプライム・ショックの直前にカリフォルニアのゴールデン・ウエスト・フィナンシャルという貯蓄銀行を買収し、これが金融危機時の傷口を大きくする原因を作りました。

これらの二つのM&Aにより、現在、ウエルズファーゴは全米に6.185の支店網を持つ、バランスの取れたリテール銀行になっています。

住宅ローン、中小企業融資、オート・ローン、商業不動産貸付などで全米第一位です。

同社の収入をみると51%が各種フィー、49%が純金利マージンとなっています。また55%が消費者、40%が事業主、5%が海外からの収入となっています。

一歩さがって米国の大手銀行の収益環境を見た場合、近年の超低金利環境の影響で貸付利ザヤの指標である純金利マージンは漸減傾向にありました。

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しかし最近はバーナンキ議長が債券買い入れプログラムの縮小を打ち出すなど、米国の金利環境はノーマルな状態に戻りはじめる兆しを見せています。これは住宅ローンなどの小口貸付業務を基本とする同行にとって今後、良い環境になることを示唆しています。

また銀行業にとって怖いのは貸し付けた先が焦げ付くことですが、景気回復とともにそれもノーマルな状況に戻りつつあります。

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銀行の収益性を測る、もっとも単純な尺度は総資産利益率(ROA)だと思いますが、これは未だリーマンショック前の水準には戻っていません。

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しかし、上に書いたような理由で、今後、じりじり利益率は上がって行くと思います。


アメリカのメガバンクの中にあって、ウエルズファーゴだけはちょっと特異な存在です。それは他行のように投資銀行業務(インベストメント・バンキング)を手広く展開していないという点です。

あくまでも昔ながらの、小口預金を預けてもらい、それを貸付に回すという、愚直とも言えるビジネス・モデルを貫いているわけです。

その結果、同行は他行とはかなり違うファンディング(資金調達)構造をしています。

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上のグラフで緑色のInsured deposit とは、預金保険によって保護された、言いかえれば小口の預金を指します。この小口預金は、しばしばコア・デポジットと呼ばれます。なぜ「コア」かと言えば、小口預金は資本市場の乱高下によって左右される危険性がわりあい低い、安定性の高い貸付原資だからです。

これに対して気まぐれで、心変わりしやすい貸付原資を「ノン・コア・ファンディング」と呼ぶ場合があります。

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この比率が高いほど、資本市場が荒れた場合、リスクが高いわけです。


ウエルズファーゴは総資産売上比率が大手銀行の中で最も高いです。

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総資産利益率でも他行をしのいでいます。

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同行は顧客サービスに極めて力を入れており、行員教育が行き届いています。日本では当り前かも知れませんが、アメリカの銀行でどの支店に言っても必ず先ず行員が「いらっしゃいませ。今日はどのような御用ですか?」と礼儀正しく挨拶するのは、大手ではウエルズファーゴだけです。

カスタマーがソファで待っているとき、「お水をお持ちしましょうか?」とか「飴玉、しゃぶります?」とか、うるさいほどサービス精神を発揮するわけです。

そしてバンカーは顧客が何を求めて来店したのかをきちんと把握し、その目的を処理した上で、関連する金融商品の紹介、リスクの開示、どの個人情報をなぜ訊くのか、そしてそれがどう保護管理されるか? などをテキパキ説明します。

ウエルズファーゴの支店は、行員が若く、きちんと教育されており、和やかで、いつもエキサイティングな雰囲気に包まれています。

通常、新規口座開設や住宅ローンを組んだときなどは、数日後に調査会社ギャラップから好感度調査の電話がかかってきて「先日、ウエルズファーゴの支店をご利用されましたよね? その時のサービスはどうでしたか?」とアンケート調査のフォローアップがあります。

つまり行員はとても厳格なパフォーマンス評価をされているわけです。

この辺りも、同行がリテール・バンキングのベスト・ブランドネームであり続ける秘密だと思います。