あまねく弱気意見で一致を見ているアセットクラスは、一考に値する……これは僕の主義です。

幅広い投資家の意見がキレイに一致しているという点では、ゴールドほど嫌われているアセットクラスも無いでしょう。

弱気になる理由としては米国連邦準備制度理事会(FRB)が債券買い入れプログラムの縮小を発表したことが挙げられます。これはドル高要因であり、ドルの信認が高まるとゴールドは売られます。

しかし……

新興国通貨が荒れれば、普段我々が考えもしなかった新しい処から、金に対する需要が出て来ることも、考慮しなければいけません。

説明します。

下は世界の中央銀行の総資産を、全部、積み上げたグラフです。

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なるほど緑の、FRBは大きいけれど、それが世界の全てではありません。

実際、いちばん大きいのは新興アジア諸国の中央銀行なのです。ここには中国人民銀行はじめ、インド、インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシアなどの中央銀行が含まれます。

ピンク色の、その他新興国の中銀と合わせると、新興国グループはFRB、ECB、日銀、イングランド銀行の総和より大きいのです。


もちろん、これらの新興国の中央銀行のバランスシートが大きい理由は、先進国のそれとは違います。新興国の場合、貿易黒字による外貨準備の積み上がりと、それによる過剰なマネーの供給を吸い上げるためのオペでバランスシートが膨れ上がっている場合もあります。

実態経済に対する中央銀行のバランスシートの大きさを見ると、新興アジアはいびつなほど中央銀行の存在感が大きすぎることがよくわかります。

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これらのことは、ゴールドにとって何を意味するのでしょうか?

僕的には、ふたつの教訓があると思います。

1.「テーパー、テーパー」とFRBの債券買い入れプログラムの縮小に大騒ぎしているけれど、世界全体で見れば、今回のテーパー額(200億ドル)は0.097%に過ぎないということ

2.新興国の中銀に対する市場の信頼は、過去(たとえばアジア通貨危機やルーブル危機)に大きく毀損したケースが散見されるということ

つまり「FRBのQE開始=ゴールドは用なし」という図式は、とてもアメリカの視点に偏った見方だということ。

昨今の世界のマーケットの荒れ方から考えて、市場参加者の見ている景色が、ガラッと変わることも無いとは言えないことに、僕は思いを巡らせています