よくグロース投資とかバリュー投資ということが言われます。

これらはいずれも株式投資をする際のスタイルです。

企業の成長を買うのはグロース投資、割安株を買うのがバリュー投資……簡単に言えば、そういうことですけど、これについては後でもうすこし厳密に定義します。

過去にグロースとバリューでは、どちらのパフォーマンスがよかったのでしょうか?それを調べたのが下のグラフです。

1

これはイボットソンというコンサルタント会社の統計です。大型株のファンドの場合ですが、過去20年でちょうど10回、バリューがグロースをアウトパフォームしていることがわかります。

それと大事な点は、一旦、バリューがアウトパフォームし始めると少なくとも数年間はそれが続くということです。逆にグロースが勝つときは数年間勝ち続けます。

次に小型株ファンドを見ます。

2

バリューが12回、勝っています。また大型株のときほど、ひとつのスタイルが何年間にもわたって勝ち続けるということはありません

一般論として、絶対グロースが良いとか、絶対バリューが良いとは、どうも言いきれないことがわかります。また、とりわけ大型株に関してはひとつのスタイルが勝ち始めると、数年間はそのトレンドが続くということです。

グロース投資、ないしはバリュー投資という旗色をファンド運用会社が明確に打ち出すことは、昔は重要でしたが、今はそれは薄れつつあります。

インデックスファンドやETFの隆盛がその一因です。

むしろ最近では株式市場全体を割安株、成長株という視点で見るのではなく、株式投資のリターンをベータ、つまり市場全体の動きからくる利食い部分と、アルファ、つまり投資家の腕前に分け、投資資金の大部分をインデックスファンドに突っ込んで、ベータを取りにゆく、そして残りの部分をヘッジファンドなどの代替資産へ投資してアルファを取る、、、そういうやり方が定着しました。

そのトレンドをみて、「スタイルは死んだ」と宣言するリサーチもでました。

ただ、ここに見たようにひとつのスタイルが勝ち始めると、数年にわたってアウトパフォームが続くということは、いまでも顕著な現象のように思います。

すると早めに今はグロースか?バリューか?という、その時代の流行を見極め、アウトパフォームしているスタイルに合わせるというやり方が考えられます。

このように数年にわたってアウトパフォームするスタイルがきまってしまう背景にはアメリカの独立系のインベストメント・アドバイザーがポートフォリオのミックスのアドバイスをする際にパフォーマンスの良いスタイルやアセット・クラスへどんどんシフトするということが挙げられると思います。IFAの仕事がある限り、スタイルがなくなることはないと思います。

グロース投資を定義します。グロース投資とは、その企業が市場平均に比べてより高い収益成長の見込める場合、株価収益率、つまりPERや株価純資産倍率、つまりPBRなどの水準を気にせずに投資する方法のことを指します。

グロース・ファンドの先駆けはフィデリティーが1958年に設定したアグレッシブ・グロース・ファンドで、当時のファンドマネージャーはジェラルド・サイという人でした。

かれの成功を見て、いろいろなファンドが登場しました。フレッド・アルジャー、フレッド・メイツ、フレッド・カーといったファンドマネージャーたちが続々とグロース・ファンドを出したのです。当然、ブームには終わりが来るので、ゴーゴーファンド・ブームも終焉しました。

3

株式投資の際、一般に投資家は上に掲げてあるような点について考慮すると思うのですが、グロース投資の投資家は株価のモメンタム業績の成長率にとりわけ注意を払います。また、マーケット自体が強気相場か、あるいは弱気相場か? という点にも敏感です。その反面、バリュエーションに関しては殆ど注意を払いません。

このアプローチの長所は株を買った直後から利が乗り始めるケースが多いという点です。逆に言えば、株を買った直後からすぐに利が乗り始めないのなら、銘柄選択や買うタイミングをあなたが間違った可能性が高いのです。その場合、すぐ処分すべきです。

グロース投資は、順張りで、しかも目をつける点が比較的明解なので初心者にも実践しやすいです

さらに相場環境そのものが良い時、グロース株はベータ値が高いので市場平均よりさらに大きなリターンが期待できると考える人も居ます。

一方、その問題点としてはチャートが崩れた時、あるいは決算発表で悪い数字が出ているのに、なんだかんだと希望的なシナリオを描いて見切りをつけられない人が居るという点です。早目の損切りが断行できない人は、グロース投資をするべきではありません。

またバリュエーションが高くても目をつぶって買いにゆくことから、バブルの天井を掴むリスクがあります

さらに泡沫的企業短命な商品浮ついたアイデアに依存する危ない会社の株を買ってしまうリスクがあります。

それからベア・マーケットになったときは市場平均よりもっと遥かに大きな痛手を蒙ります。なぜならベータ値が高いからです。

12

グロース投資の投資尺度をもう一度整理します。

5

まずEPS成長率、これが大事です。売上高成長率にも注目する投資家も居ます。それから市場全体に比べてその株価や業績の推移が優っているか?という比較感、それをレラティブ・ストレンクスと言いますが、これにこだわります。さらに決算を発表するたびにポジティブなサプライズがでないといけないです。なぜなら、上方修正、上方修正の繰り返しこそがモメンタムを生むからです。


次にバリュー投資に移ります。

先ずバリュー投資を定義します。バリュー投資とは株価がその企業の内在価値に比べて割安に取引されているときを見計らって投資するスタイルのことを指します。

内在価値とは英語ではイントリンシック・バリューと呼ばれます。

これは単に企業を買収してその資産をバラバラにして売却した場合の価値というケースもあると思いますが、むしろキャッシュフローを生み出す潜在力を指す場合が多いです。

さて、さきほど見た、銘柄のチェック項目の図にもう一度戻るとバリュー投資家の場合、モメンタムはあまり気にしません。またマーケットの地合いにも頓着しません。

3

一方、バリュー投資家はその銘柄に一体、幾ら払うんだ?という買い値にはとても厳しいです

別の言い方をすればバリュー投資家は上値に手をつけるということは恥だと思っているフシがあります

逆に言えば業績がガクンとわるくなって、株価が急落した局面でも、それはいっときのことで、また業績は元に戻ると思えば、ガッツで買い向かいます

だから悪い決算が出た時、グロースの投資家は躊躇せずブン投げて、それをバリューの投資家がせっせと拾うということは毎回繰り返される光景なのです。

バリュー投資の良い点はメチャクチャ短期で儲かったりしないかわり、比較的安定した投資成果が期待できる点にあります。

また流行に流されたり、バタバタ取引しないので効率が良いし、バブルのど天井を掴んでしまうリスクも低いです。

またつねに余裕を見て、いわゆる、安全のための糊代を考慮しながら投資するため、それがクッションとなってダメージを小さく抑えるケースが多いです。

11

その一方でバリュー投資の問題点は1年か2年くらいちょっと投資を勉強した程度では本格的なバリュー投資は出来ないという点にあります。

つまりバランスシートや損益計算書を自在に読みこなせる能力が要求されるという点です。ただ単にヤフー・ファイナンスなどでPERを見て、「うわあ、この株のPERは安い!」と思うのは、それはバリュー投資ではありません。

なぜなら、ヤフー・ファイナンスなどをみただけでは本当にいまの瞬間だけ割安になっている株と、万年割安放置されている駄目会社が区別できないからです。

別の言い方をすればバリュー投資とは、過去に大体、高い評価を維持できていた会社が、なにかの拍子に今だけ割安に放置されており、黙って持っていれば自然にまた昔の姿に戻る、、、だから今の割安はあくまでかりそめの姿なのだということを読めないといけないわけです

このためにはある程度歴史がある会社でないと投資の対象にはならないし、インターネットのような新しい商品やサービスは投資の対象としては歴史がなさすぎるので不向きです。

また、安く買うということは相場のセンチメントが悪いときに買うことを意味するわけで、短期では成果があがらないし、みんなが売っているときに買い向かうのには強い信念が必要です。

みんなが嫌う会社を買うわけですから、うわべ、見かけでは魅力のないようにみえる会社が実はオイシイという部分をかぎ分けられないと駄目です。

これにはビジネスにたいする鋭い嗅覚が必要になります。乱暴な言い方をすれば、実際に自分で商売をやったり、会社を経営したことある人の方が有利であり、経験値がモノを言います

バリュー投資のルーツはグロースより古く、理論的な礎は1934年に出た『証券分析』という本が元になっています。

7

ベンジャミン・グラハムデビッド・ドッドというコロンビア大学の教授が書いた本ですけど、彼らはウォーレン・バフェットの師匠です。バフェットはいまでもほぼ忠実にこの本にかかれている価値観やルールを実行しています

この本が出る前は株式投資に対する体系的な理論というのは存在せず、株というのは賭け事と同じだと考えられてきました。でも機関投資家は当時も存在しました。それでは機関投資家は何に投資していたか?というとそれは主に債券でした。社債とか、鉄道債、電力債などが中心だったのです。

1929年に大暴落に至る株式ブームでは人々は噂やムードに流されて手当たり次第株を買いました。だから暴落がおきたときは「やっぱり株なんて、手を出すもんじゃない」という否定的な意見が多かったのです。グラハムとドッドはバブルの残骸のなかから、「いや、そうじゃない、株式だって比較的安全に投資する方法があるはずだ」ということを主張したのです。

株式投資が投機ではなく投資であるということの概念のフレームワークはこの本によって出来たのです。別の言い方をすれば株というものが機関投資家のまともな投資対象として選択肢のひとつに入るきっかけを作ったのがこの本なのです。

これをイメージしてもらうため、ちょっと脱線すると、オプションの価格決定理論にブラック・ショールズ理論というのがありますが、あれが出る前はオプションというのは博打であり、機関投資家がオプション投資に手を染めることはありませんでした。でもブラック・ショールズ理論が出てからはオプションやデリバティブに対するプロ投資家の認識がガラッとかわったわけです。『証券分析』と言う本はちょうどそれと同じような一時代を画する型破りな本だったのです。

その『証券分析』の本にはいろいろな投資のヒントが出ていますけど、私なりに参考になるなと思った言葉を抜き書きしてみました。
89

最後にバリュー投資の際に使われる投資尺度をもう一度まとめておきます。

10