デトロイト市の財政破たんが日本のマスコミでも話題になりました。破たんの理由を米国の自動車産業の衰退に求める声は多いけれど、問題はもっと複雑だと思います。

まずデトロイトは「郊外化」を積極的に進めた都市として知られています。その結果、買い物ひとつするにしてもクルマに乗って行かなければいけなくなりました。

都心の人口密度が或る水準以下に下がると、バスや鉄道などの公共交通サービスの維持が困難になり、それはますます人々を都心から遠ざける原因になります。

徒歩による人通りが途絶えてしまうと、店舗は来店客が少なくなり、商売を続けることが出来なくなります。

このような悪循環が都心を凋落させるのです。

アメリカは製造業のような大きな工場を中心とした経済から知識集約的経済へ構造転換しました。頭を使う仕事に従事する人たちは職場の回りの住環境にも敏感です。

ランク上位に入る有名大学や大学院を卒業した優秀な人材が就職先を求める際、住んでみたいと感じる魅力ある都市は、歩行者にとってフレンドリーな街です。

下はウォークスコアが出している、米国の主要都市の歩き易さ(青)のスコアです。(なおこのグラフは一部抜粋であり、網羅的ではありません)

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歩き易さには高速道路などに阻まれること無く、どこにでも徒歩で行けるとか、商店と商店の間の距離が離れ過ぎていないとかの考慮点が含まれていると思います。

またバスや路面電車、地下鉄などの公共交通の便利さの指標(赤)も加えておきました。

さらにアウトドア派の人は自転車での通勤にも関心が高いので、自転車にフレンドリーかどうか(緑)のスコアも載せておきました。

ニューヨーク、サンフランシスコ、ボストン、シアトルなどはこれらの尺度で高いスコアを出しており、知識集約的な有名企業が本社を置いています。


ニューヨークの場合、ゴールドマン・サックスに代表される金融機関、タイムワーナーに代表されるメディア、法律事務所、ファッション、広告などの産業が強いです。教育機関としてはコロンビア大学やNYUがあります。

サンフランシスコの場合、ツイッターやジェネンテック(ロッシュ)などがあります。教育機関としてはスタンフォード大学やUCバークレー、医学のR&Dでは抜きん出ているUCSFなどがあります。

ボストンにはフィデリティやステートストリートに代表される運用会社、EMCやアカマイに代表されるハイテク企業、バイオジェン・アイデックなどがあります。教育機関としてはハーバード大学、MITなどがあります。

シアトルにはアマゾン、マイクロソフト、スターバックス、REI、コストコなどがあります。教育機関としてはUWがあります。

いずれの場合も人材や人口の面で或る程度の密度(density)が無ければ有能な社員をリクルートできないというわけです。

マンハッタンのトライベッカの倉庫街のジェントリフィケーション(再開発)は有名ですけど、同様の再生はサンフランシスコのSOMA地区やシアトルのウォーターフロントにも見られました。これらの再開発は、いずれも徒歩にフレンドリーになることを念頭に置いて行われたました。

これは偶然ではありません。