ウォールストリート・ジャーナルによるとベライゾン(ティッカーシンボル:VZ)とボーダフォン(ティッカーシンボル:VOD)がベライゾン・ワイヤレスを巡って話し合いをしています。早ければ一週間以内に何らかのディールが発表される可能性もあるそうです。

ベライゾン・ワイヤレスはアメリカで最大級の携帯電話会社ですが、ベライゾンが55%、ボーダフォンが45%所有しています。このような複雑な持ち株構成になった経緯を説明します。

もともとサンフランシスコのパシフィック・テレシスの携帯電話部門だったパクベル・セルラーが親会社からスピンオフされ、エアタッチという会社になりました。その後、エアタッチは英国のボーダフォンと合併します。そして1999年にボーダフォン・エアタッチがアメリカの地方電話会社、ベル・アトランティックの携帯電話事業とジョイント・ベンチャーを立ち上げ、両社の携帯電話資産をひとつにまとめたのです。このJV部門が、こんにちのベライゾン・ワイヤレスというわけです。

ベライゾン・ワイヤレスはアメリカのベライゾンにとっても、英国のボーダフォンにとっても重要な資産です。なぜならスマホ・ブームの影響もあり、いま携帯電話事業は儲かっているからです。

ベライゾンからすればドル箱となっているベライゾン・ワイヤレスの100%を支配下に置きたいと考えるのは当然です。一方、ボーダフォンにしてみると、この部門だけが今、ガンガン稼いでいるので、その一番大事な部署を売り渡したくないのです。

両者が「妥当な手打ち値段だ」と考える金額には、大きなひらきがあります。ウォールストリート・ジャーナルは「ベライゾンは1,000億ドルを支払う用意があり、ボーダフォンは1,300億ドルじゃないと駄目だと考えている」らしいです。


若し両者が合意の上で、大きなキャピタルゲインが出ないようなカタチでこのJV資産の譲渡が出来れば良いですが、そういう協力が無い場合は、敵対的買収ということになります。

その場合、ベライゾンがまずボーダフォン全体を買収した後、余計な部門を売却するというやり方になるでしょう。それだとベライゾンは莫大な買収資金を用立てしなければいけなくなるし、税金面でも非効率になる危険性があります。

両者のうち、ベライゾンは、特に今、ディールを急ぐ必要性を感じています。なぜならリーマンショック以降の超低金利時代が、ひょっとすると終わりつつあるかもしれないという認識を彼らは持っているからです。

一方、ボーダフォンからすると現在、同社の欧州の資産は業績が悪いです。ボーダフォンは2000年にドイツのマンネスマンを買収しており、ドイツに大きな携帯電話事業があります。この部門は今後、景気サイクルの改善とともにゆっくり業績を回復してくるものと見られています。

下はボーダフォンの地域別売上高ならびに営業利益のグラフですが、「その他」にはベライゾン・ワイヤレスが含まれています。

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売上高ベースではドイツが+0.5%、英国が-4.0%、スペインが-11.5%、イタリアが-12.8%となっています。ベライゾン・ワイヤレスは+8%でした。

下はボーダフォンの業績です。

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【略号の読み方】
DPS一株当り配当
EPS一株当り利益
CFPS一株当りキャッシュフロー
SPS一株当り売上高


ボーダフォンの営業キャッシュフロー・マージンは35.9%あり、これは素晴らしいです。上に述べたように景気サイクル的にも欧州は今がボトムなので、良いタイミングだと思います。