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新しい電子書籍、『乙女たちの翼』を出しました。本書はアメリカ陸軍女性補助輸送部隊(WAFS)のナンシー・ハークネス・ラブ曹長の伝記です。一人称による回想録の形を取っています。

僕がWAFSの存在を知ったのは、オフィスの近くにあるハミルトン・フィールド(=元空軍基地、いまはオフィスビルや住宅地になっています)の小さな博物館で、WAFSに関する展示を偶然見たからです。

第二次世界大戦初期、アメリカの軍備は、ドイツや日本に比べて、質の面でも、量の面でも、お話にならないくらい遅れを取っていました。

その遅れを大急ぎで取り戻さなければいけなくなったので、アメリカは産業界を総動員して戦闘機や輸送船を大量生産します。

ところが工場からどんどん出て来る戦闘機や爆撃機を、後方で輸送する人手が足らなくなりました。そこで女性パイロットがその輸送業務に駆り出されました。

WAFSは民間ボランティア組織であり、軍隊ではありません。だからWAFSが前線に赴くことはありませんでした。同じ理由で、本書には戦闘シーンは出てきません。

操縦が難しいといわれたP47Dサンダーボルト、P51ムスタング、B17空の要塞などを、安全に、最高のコンディションで、迅速に届けることが、彼女たちの任務でした。

第二次世界大戦前夜のアメリカは、大恐慌の後遺症で、経済的にとても苦しい時代だったので、女性でパイロット免許を取得している人は、みんな裕福な家庭に育ち、お嬢さん学校を卒業した人たちでした。日本で言えば、フェリスとか津田塾の感覚です。そういう女性パイロットたちが、2年間に、1万2千機もの飛行機を飛ばしまくります。

本書のヒロイン、ナンシー・ハークネス・ラブはミシガン州の片田舎でBarnstormers(=直訳すれば「納屋を急襲するものたち」、つまりサーカス飛行で見物料を稼ぐ飛行士たちのこと)に接し、空の魅力の虜になります。飛行を覚えると、すぐに無鉄砲な冒険を繰り返し、次々にトラブルに巻き込まれます。そのような経験を通じて、臆病なほど保守的で、手堅い飛行をするパイロットに成長します。その腕前を見込まれて、航空商務省のテスト・パイロットになり、さらに陸軍から大きな仕事を任されてしまうのです。

本書には、個々の戦闘機の持つ、設計上の特性や、それが操縦に与える影響、フライトに際してのコックピット中での手順なども出てきます。また陸軍航空部隊の内部ポリティクスについても触れています。

でも究極的には、『乙女たちの翼』は、空を飛ぶ事の魅力についての本です。

なお本書はiPhone、アンドロイド、iPod Touch、iPad、Kindle Paperwhite、Kindle Fireに対応しています。

【本書で言及されている飛行機】

キナー・フリート・モデル2
スティアマンC3
グレート・レイクス2T-1
カーチスライト・トラベルエアー3000
ヴァイキングB8キティホーク
ワーコUBF
スタガーウイング
ハモンドY
グウィン・エアカー
フェアチャイルド24
P51A
C47スカイトレイン
P47Dサンダーボルト
P38ライトニング
B17空の要塞
B29スーパーフォートレス


【本書で言及されている主な人物】

ナンシー・ハークネス・ラブ曹長 女性補助輸送部隊
ベティ・ジイリース P47Dのフライト・リーダー
ジャッキー・コクラン WASPディレクター
ビル・タナー大佐 米国陸軍輸送部隊
ジョージ・マーシャル陸軍参謀長官
ハップ・アーノルド少将
ビル・ヌドセン ルーズベルト大統領のアドバイザー、大量生産の専門家
ヘンリー・フォード フォード自動車
アルフレッド・スローン ゼネラル・モーターズ


ナンシー・ハークネス・ラブ曹長その他の写真は、このFacebookページに載せておきました。順次、関連する写真をUPするつもりです。