議会の紛糾で米国政府機関の一部閉鎖が始まって1週間が経ちました。
下院を支配する共和党、上院を支配する民主党とも、お互いに一歩も譲らず、事態は全くの膠着状態です。

米国政府がひょっとするとデフォルトに追い込まれるかもしれないという、冗談では済まされない状況を「人質」として、両党の危ない駆け引きが始まっています。

この光景は2008年のリーマンショックの後のTARPを巡る論争を彷彿とさせるものがあります。あの時も大規模な金融恐慌を引き起こすかもしれない事態だったにもかかわらず、モラルハザードなどの建前論に振り回されて、TARPは一旦、退けられてしまいました。その直後にマーケットが700ポイントも下げたので、慌てて議会が動いたのです。

このように今のアメリカの議会は共和党も、民主党も、マーケットの急落で背中を押されない限り、自分から歩み寄る事が出来なくなってしまっているのです。オバマ大統領は先週のインタビューで、市場が崩れないか「もっと皆心配した方がいい」と、聞き様によっては脅しとも、暴落願望とも取れる発言をして市場関係者の失笑を誘いました。

オバマ政権はアメリカ合衆国憲法修正第14条を持ちだして、大統領の一存で債務上限を増やしてしまう秘策を検討したと伝えられています。さすがにコレは、まずいと思います。オバマ大統領も「それは得策ではない」と、修正第14条を使う可能性を否定しました。

修正第14条というのは南北戦争の後の奴隷の解放に関連して成立した法案で、映画『リンカーン』の中でも出てきます。当時奴隷はプロパティ―(私有物)と見做されていたので、奴隷を解放することは財産の価値の消滅を意味します。それに対する補償をする義務があるかどうかを議論した際、極めて広い解釈をする余地が修正第14条の中で発生してしまったのだと説明されています。

映画『リンカーン』では、奴隷解放を押し進めるためには、先ず戦争をギリギリまでエスカレートしなければいけないという逆説的なシチュエーションが描かれていました。今回の米国債務上限引き上げ問題も、まず対立のエスカレーションを経なければ次のステージに進めないという情けない状況である点が似ています。

いざ米国が本当にデフォルトの危機に瀕し、共和党と民主党が急いで歩み寄らなければいけなくなった場合には、債務上限を幾ら引き上げるか? という細かい財政議論をすっ飛ばして、「とりあえず急場をしのぐ」ための簡単な付加条項を設ける事でデフォルトは土壇場で回避できると見る人もいます。

むしろ中期的に心配しなければいけないのは政府機能一部閉鎖などにより経営者のマインドが萎え、米国の景気がつんのめるリスクの方でしょう。その場合、QE、つまり債券買い入れプログラムの縮小が当分見送られる事を意味するので、逆にマーケットにとってはプラスに働く可能性もゼロだとは言えません。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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