10月の非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に上回る20.4万人でした。

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また8月、9月の数字も上方修正されました。

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このことから、1.米国政府機能一時閉鎖、2.債務上限引き上げ問題のふたつの要因は、雇用主の採用計画に市場参加者が考えていたほどには悪影響を及ぼさなかったことが汲み取れます。例年繰り返される茶番劇を、スルーするチカラを、民間セクターが養ったと言えるかも知れません。

なお政府関係で一時帰休扱いにされた労働者は、その期間、賃金を貰っていたので、失業扱いにはなっていません。

さて、失業率の方は7.3%でしたが、今回は求職期間が長すぎて、職探しをあきらめてしまあった人が急増しました。だから実際の内容は見かけより悪かったです。

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今日のデータを受けて、11月14日に予定されている、ジャネット・イエレン次期FRB議長の上院での質疑応答が面白くなってきました。

この内容なら、債券買い入れプログラムの縮小(=これをテーパーリングといいます)の可能性について言及せざるを得なくなるでしょう。

昨日までのコンセンサスは「今年はテーパーリングなし」というものでした。特に12月にFRB(連邦準備制度理事会)が金利政策を動かすのは、クリスマス商戦真っ盛りの折、得策ではないという考え方があるので、新機軸が打ち出される可能性は低いと見られてきたわけです。

しかしイエレン候補の承認に際しては、上院での投票が必要になります。


投票は二段階に分かれており、まず彼女を指名することの是非を議論した後、「これで審議打ち切りしてOKですね?」という投票をします。つまり「ディスカッションを終えることに合意する投票」です。このことをクローチャー投票と呼びます。

クローチャー投票では上院議席数100のうち、60票が必要となります。既に2名以上の上院議員が議事妨害、つまりクローチャー投票に持ち込めないように、引き延ばし作戦を繰り出す意向を表明しています。因みに民主党の議席数は最大限にカウントしても55で、両党派の支持が無ければクローチャーは成立しません。

このことからもイエレン候補の承認が、スンナリ行かない可能性があるわけです。言い換えれば、イエレン候補は、上院での質疑応答では、市場参加者に対するメッセージを考えながら喋るのではなく、自分が承認してもらえるよう、「うんこ頭」の議員さん達に或る程度阿った答弁を強いられるということです。

この苦しい立場を、特にFXや債券をトレードする人たちは、頭に入れておく必要があるでしょう。

またクローチャー投票は、本投票ではないので、反対意見を表明しやすいです。その事は、ハードルは本投票よりクローチャー投票の方が高いことを意味します。なお本投票での必要票数は単純過半数の51票です。

今回の質疑応答は、ジャネット・イエレンがマスコミのスポットライトを浴びて、「キモノを脱ぐ」最初のイベントなので、多分、FOMCなどよりずっと重要だと思います。政治家のあしらい方、メディアとの接し方など、学者としてではなく、FRB議長という、コミュニケーション技術を要求される立場に就く人間としての、彼女の力量が問われるわけです。

彼女は女性なので、市場参加者の多くは「彼女はコンセンサス重視で、借りて来た猫のようにおとなしいだろう」と決めてかかっています。でも、そうではない可能性もあります。サンフランシスコ連銀の調査部次長、メアリー・デイリー氏によれば、「ジャネットには、性急で猛々しい一面もある」そうです。(メアリーは投資家コミュニティに対する窓口を長く務めた人なので、日本の機関投資家の中にも顔見知りの方が多いはず。僕もずいぶんお世話になりました)

承認投票という、全力で臨まなければいけない試練に直面し、ジャネットの猛々しい本性がむき出しになれば、ボラティリティ的には面白い展開ですよね?