その昔、インターネットのブラウザーを作ったネットスケープという会社がありました。ネットスケープのIPOは、インパクトありましたねぇ。

当時は、インターネットなんて未だ余り普及してなかったので、新規株式公開の売出し目論見書に書かれていることの大半は、僕にとってチンプンカンプンだったし、アフターマーケットで付いた株価評価(=暴騰しました)は、それに輪をかけて不可思議なものでした。

兎に角、どえらいコトが起こっている……これは絶対、自分の目で確かめなければ。

そういう思いで一家あげてニューヨークからサンフランシスコに引っ越してきたのが1996年です。ま、そのへんのコトは29日に出る本(いちばん下にリンクを貼っておきます)にも書いておいたので、繰り返しません。

ああいう「どえらいコト」というのは、人生でそう何度も巡り合えるコトでは無いんですね。で、いま、われわれの眼前に(これはひょっとしたら、ひょっとするかも……)というどえらい現象が繰り広げられているわけです。

それは仮想通貨です。

まあ、ハッキリ言って、ビットコインのエレガントな仕組みの持つ堅牢さ、美しさに関しては、僕はそれを平易な言葉でみなさんに説明できるほどテクノロジーに関するリテラシーが無いし、国語の表現力も無いわけです。

でも「黒の大魔王(ダークロード)」が、慌てて現場に急行中だという事実が、全てを物語っていると思います。僕にとっては、それだけで十分。

「黒の大魔王」というのは今、アメリカのベンチャー・キャピタル・シーンで最も深遠な考えを持っている人として隠然たる影響力を持っているフレッド・ウイルソンです。ツイッター、タンブラーなどへの投資実績からも、凄い人だということはおわかり頂けると思います。バリュー投資にウォーレン・バフェット、グローバル・マクロ・ヘッジファンドにジョージ・ソロスなどの著名投資家が居ますけど、フレッド・ウイルソンはVC界では、そのくらい有名です。

で、フレッド・ウイルソンはタンブラーがヤフーに買収された後に、ネット関連の投資機会全てを倦む気分に陥り、どんどんキャッシュアウトされているカネの使い道に困ってしまったんですね。「廃業しようか」という気分が起こったかどうかは知らないけれど、彼がある種のスランプに陥ってしまったのは、まちがいないと思います。

ところが、そこで彼はどえらい彗星にぶち当たるわけです。それが……仮想通貨。

彼がどれだけのビットコイン関連企業に投資したかはわかりませんけど、少なくともコインベースにはVCのカネをぶち込んだことだけは、わかった。



で、僕は、何もわかんないアフォですけど、少なくとも「名人が走ったら、それを真似て思いっきり同じ方向へ走る」という基本動作だけは長い投資人生で身につけたわけです。

もちろん、世の中はビットコインに対して懐疑的です。そういう僕も2年前のクリスマスに、いとこのショーンからビットコインの話を聞いた時、「そんな胡散臭いものに、手を出すな!」と、こんこんと諭した記憶がアリマス。ショーンはウェブ・マーケティング関係のスタートアップを転々としているイラン人で、LAのハッカー・シーンに出没している奴ですけど、チョー軽いんだ、コイツが。

だからビットコインの第一印象は、悪かった。

でもイノベーションというものは、だいたい最初に出て来る時は、胡散臭いモノなんですね。さらに言えば既得権益に浴している、失うものが大きい奴が、声高にそのイノベーションをdisるので、大体、大衆は、その「権威の声」に屈するカタチで、保守反動的な考え方に賛成するものなのです。

「相場で大儲けするときは、何かを発見したときだ」という格言がありますけど、およそ投資に携わる人は、このディスカバリーというものに対して、謙虚でなくてはいけない。

「なに、その謙虚って?」

と皆さん思うでしょうけど、ここでの「謙虚」とは、「知らないコトなら、勉強する」というコトです

なぜ勉強が大事か?

それはごく一握りの、事情通の持つ情報と、先入観に凝り固まった、一般大衆の無知……この知識ギャップこそが、投資の利益の源泉だからです。言い換えれば、投資の作業というのは、このギャップを克服していく過程に他ならないのです

にんげん、未知なモノにはとんでもない評価を付ける傾向があります。夢は広がるシャボン玉ってやつです。

だから小学生くらいの初恋では、大体、好きになった相手に対して「○○子ちゃんほどキレイな娘に限って、うんこするわけがない!」とか、痛々しいほどの理想化、神格化が起こるわけです(笑)

で、そのような初々しい勘違いという現象は、株式市場では日常茶飯事に起きてます。だからこそ、たとえばフェイスブックの株価収益率(PER)が97倍になるのです。

それじゃコカコーラのPERの20倍と、フェイスブックのPERの97倍とでは、何が違うのか? と言えば、「炭酸入り砂糖水」のコカコーラには、神秘も無ければ、浪漫も無いということなのです。そこへ行くとフェイスブックは、ラノベで言う「14歳の少女」みたいなもんです。10歳でもいけないし、18歳でもいけない。14歳の少女がはいているからこそ、その制服の、真っ白いハイソックスに、深遠なるミステリー、むせるような色香があるわけです(笑)

さて、ビットコインは、胡散臭さプンプン、わかんないことだらけという点では、ある種、ネットスケープのIPOの時のような勢いがあります。

こういう瞬間なんですね、日本人のダメダメさが露呈するのは。

先日、ビットコインに関して、アメリカの議会で公聴会が開かれました。そこでは国防省、財務省、FBIなどの担当者が金融犯罪や国家安全保障の見地から「これって、どうなのよ?」というディスカッションをしたわけです。バーナンキFRB議長も、自分の考えを述べた書簡を提出しました。

で、僕の印象に残ったことは「みんなとても新しいモノにたいしてオープン・マインドだな」ということです。「疑わしきは×」ではなくて「疑わしきは○」という姿勢です。アメリカのメディアは、この日の公聴会を「ビットコインの愛の宴だった」と形容しています。

アメリカで「このバーチャル・カレンシーというものをどう積極的に取り込んで、パックス・アメリカーナの拡大に利用するか?」というコトを、道端でエロ本拾った中学生が「ゴックン」と生唾呑み込むような具合で議会の公聴会で討論している一方で、日本ではビットコインは全く話題になっていません。

日本では「与沢翼タイホ!」とかがトレンディングしている(笑)

でも、ビットコインって、もともと日本人が発明したんですよね? 世界最大のビットコイン取引所だったMt. Goxって、日本にあるんですよね?

で「日本にもシリコンバレーを作る!」とか……

何かズレてません?


僕はシリコンバレーに近い、マリン郡に住んでいるわけだけど、友人のギークなおっさんたちは「日本人スゲー! ビットコインすげー!」とコーフンしているわけです。つまり日本人は、仰ぎ見られている存在

で、やつらは昨日までHFT(=ハイ・フリックエンシー・トレーディング)がどうだこうだと議論していたわけだけど、今は「ビットコイン探索機には空冷式が適しているか、水冷式が適しているか?」という議論を、唾を飛ばしながら、やっている。大体、シリコンバレーのオタクたちがコーフンすると、すぐ空冷式か水冷式か? という論争が出て来る(笑)

ビットコインが「旬」の時期に入ってきていることを示す、ひとつのインディケーターというわけです。

しっかりしろよ、日本!

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