プライスライン・ドットコム(ティッカーシンボル:PCLN)は、いわゆる値嵩(ねがさ)株です。

値嵩株とは、株価そのものの数字が大きい銘柄を指します。プライスライン・ドットコムの現在の株価は$1,196です。つまり一株が10万円以上しているわけです。

昔は、アメリカの株式市場の通例として、株価が騰がり、値嵩になってしまった株は、サッサと株式分割をして、手頃な値段まで見かけ上の株価を下げるということをしました。

具体例で説明すると、例えば今、プライスライン・ドットコムが50:1の比率で株式分割をしてやると、株価は$23.92(=計算としては1,196÷50)になります。その代わり、分割前に1株持っていた株主は、持ち株数の記録が「50株」に改められるわけです。

このような調整を、頻繁に行った理由は、アメリカでは単位株と呼ばれる、通常の最低取引ロットが、100株だったことによります。それ以外の単位(=これをオッドロットといいます)、たとえば1株だけで取引しようとするとそれは証券界の隠語で「板汚し」と呼ばれる、中途半端なサイズになってしまい、その取り扱いの手間にかかるコストを投資家に転嫁するため、通常の委託手数料より割高な、スペシャル料金を請求されることが多かったです。

これは、昔、全ての立会場での取引が、電話と場立ちの紙のチケットという、ローテクな方法によって突き合わされていたことにも多いに関係しています。しかし今はコンピュータによる処理が進んでいるので、オッドロットだろうが、通常のロットだろうが、処理コストは殆ど差が無い筈です。

なぜこのようなことをクダクダ説明するかといえば、このプライスライン・ドットコムのような値嵩株は、オッドロットの注文が多くなりがちなので、証券会社のリサーチにも、おのずと力が入らなくなることが多かったわけです。その昔ながらのクセが、今も証券マンのメンタリティーから完全に抜けていないというわけです。

まえおきが長くなったけど、プライスライン・ドットコムも、そのような理由で本来、この株に与えられるべきアテンションが割かれていないような気がします。

プライスライン・ドットコムは、いわゆる旅行予約サイトです。Bookings.com(ホテル中心)、priceline.com、agoda.com(アジア中心)、rentalcars.com(レンタカー中心)などのブランドを持っています。


同社の創業は1998年で、当時はpriceline.comだけでした。現在、同社の予約金額の82%は海外です。プライスライン・ドットコムは米国で「あなたは幾らまで払いたいですか?(name your price)」というサービスを始めたことで知られています。これは飛行機のフライト直前の空席などの「売れ残りの在庫」をまとめてオファーするやり方で、「安く旅行できるのなら、少々直前まで予定が固まらなくても構わない」というレジャー旅行客のバーゲンを求めるニーズと、少しでも空席を埋めたいという航空会社側のニーズをマッチさせるものです。

同社の業績は下のようになっています。

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【略号の読み方】
DPS:一株当り配当
EPS:一株当り利益
CFPS:一株当りキャッシュフロー
SPS:一株当り売上高


いまCFPSをSPSで割ると営業キャッシュフロー・マージンが得られます。同社の2013年の営業キャッシュフロー・マージンは約33%です。これはたいへん立派な数字です。

良い企業は、この営業キャッシュフロー・マージンが最低15%から35%くらいあるものです。

これは僕が日頃、「安産型ナイス・バディの法則」と呼んでいる基準で、ピチピチした健康体の企業を探す際の、ひとつの足切り基準です。

スリーサイズ

ちょっと話が脱線するけどアメリカのファッション・モデル業界では「モデルになるための暗黙の足切り基準」というものが存在します。それは:

身長が5フィート8インチ以上であること
ヒップからウエストのサイズを引いた差が、10インチ以上あること
ヒップのサイズは36インチ以下であること


という3つです。

「あれ、なぜ体重を聞かないの?」

と皆さんは思うかも知れません。なぜなら太ることはモデルにとって大敵であり、モデルたちが一番気にするコトだからです。

しかし実際にはオープンコールと呼ばれるオーディションで、モデルの体重測定をすることは、ありえないです。

それはなぜか?

それはどうしてかと言えば、身長で足切りし、後はヒップとウエストの差で制約を設ければ、自ずと体重は美しいプロポーションの中に収まってしまうからです。

企業分析にも同様の法則が当てはまります。

「営業キャッシュフロー・マージンで15%から35%の枠内に収まっていて、しかも年々、安定的に一株当りキャッシュフローを伸ばしている」という基準を設けるだけで、他のレシオの殆どは、ちょうどモデルの体重を測定するまでもなく、それが美しいプロポーションの範疇に入るかどうか判ってしまうのと同様、「良いビジネス」の基準の中に収まってしまうのです。

因みにごく平均的なアメリカ企業の営業キャッシュフロー・マージンは12.2%です。

キャッシュフローが潤沢で、しかも安定的に伸びている企業は、事業にムリが無く、今後の展開に関してもフレキシブルです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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