韓国政府が今頃になってTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加に興味を持っているとシグナルしはじめています。

(なんだい、今頃になって!)

という気持ちはさておき、韓国が焦る理由というのを整理しておくことは有益かと思います。

まず我々日本人はTPPと聞くと、すぐ「コメか?」と連想してしまうわけですが、実際には、知的所有権の保護や、サービス業、エネルギーなど広い範囲を含んでいます。

エネルギーの話に限定すると、現状では米国から日本へのシェールガスの輸出は、個々のプロジェクト・ベースに米国の承認を得なければいけない仕組みになっています。

これまでに3つのプロジェクトがOKされているけれど、その度ごとにワシントンDCの「うんこアタマ」の議員サンたちの顔色を窺いながら、ビジネスを進めなければいけないのは、とっても心細いです。

あいつらは票のためには自分のカカアですら売り飛ばしかねない日和見主義者たちなので(=その不安定さは米国債務上限引き上げ問題などで皆さんもご承知だとは思いますけど)、既にOKしたプロジェクトを、前言を翻すカタチで、いつ輸出許可キャンセルするか、わかったもんじゃないのです

そこへ行くとTPPというのは全然次元が違うコミットメントです。TPPの合意が成立すると「やっぱり日本に天然ガスを輸出するのは、止そうぜ」という身勝手は、出来なくなります

日本は昔、一度アメリカに「対日原油輸出禁止」というカタチで梯子を外された経験があります。それが太平洋戦争の直接の引き金になったと見る歴史家も居ます。

アメリカのシェールガスを欲しがっているのは、日本だけじゃないのです。韓国だって、中国だって、欲しい。

そこで中国は、今、どんどんアメリカのシェールガス田の権益を直接買収することで、将来、天然ガスの輸出の際に中国を優先してもらおうと画策しています。しかし中国はTPPに加盟していないので、いくらシェールガス田の部分的オーナーになったとはいえ「エネルギー輸出は、原則禁止!」というアメリカ側のルールをねじ曲げて輸出の便宜を図ってもらうことはできないのです。

いま日本のマスコミは防空識別圏を巡る各国の「パフォーマンス」を報じることに大忙しですけど、あれはあくまでも示威行動の範囲内、つまりパフォーマンスの域を出ていないのです。これに引き換え、TPPはエネルギーの安定供給に直結する、拘束力のあるネゴシエーションです。

大袈裟な言い方をすれば、TPPは、欧州連合(EU)のルーツになったECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)のようなプラットフォームになるかも知れません。

若しそうだとしたら、その中心でリーダーシップを取るべき国は、日本でなければいけないと思うのです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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