いま、われわれの眼前に展開しているメガトレンドのひとつとして、1990年代このかたずっと続いてきた、新興国への工場移転、ないしはグローバル・アウトソーシングという流れが、ほぼ一巡してしまったことを指摘できます。

たった一枚のグラフが、全てを物語っていると思います。

1

これは世界のGDPに占める貿易の割合を示すグラフです。もちろん、細かい事を言えば、「米国のシェールガス・ブームでアメリカが外国から原油を買わなくなった」などの要因が影響しています。

しかしグローバルな貿易の鈍化は、これ以外のあらゆる統計に現れはじめているのです。

もちろん、今行われている製造業の国際分業とか、ITアウトソーシングが「逆流する」ということではないと思います。ただこれまでのような「中国に工場を建てれば、なんとかなる」式の発想は、もう昔のような投資リターンを生まなくなっているのです。

これは僕のような新興国大好き人間にとっては辛すぎる試練です。喩えて言えば「エロサイトを閲覧しちゃいかん!」と言われているような(笑)

安いんですよね、新興国株式のバリュエーションは。だから、余計、欲情する……

でもバリュエーションがどんどん安くなっているということは、難しい言葉で言うとマルチプル・コントラクションが起こっているのです。マルチプルとは株価収益率の倍率(マルチプル)を指します。コントラクションとは「緊縮する」という意味です。そういう言い方でわからなければ、どんどん評価が落ちているということ。

およそプロ投資家として、キョーレツなマルチプル・コントラクションを起こしている市場に投資したままにすることほど、恥ずかしいことはありません。

ずっと昔からの読者なら覚えてくれているかもしれないけれど、僕がBRICsを好んだ最大にして唯一の理由は、それらの国が「ほかの誰も持っていない、一撃必殺技をもっているから」でした。

それは中国で言えば加工輸出です。インドで言えばITアウトソーシングです。ブラジルで言えば農業や鉱業です。ロシアで言えばエネルギーです。

でも、それらの必殺技の破壊力が、今は薄らいでいるわけです。

この事実は、厳粛に受け止めるべきだと考えています。