昨日、ツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)が取締役会に元ピアソンCEO、マージョリー・スカーディーノを加えたと発表しました。

ツイッターは幹部の中に女性社員が少なく、かねてから批判を浴びてきました。マージョリー・スカーディーノという大物を指名したことで、この批判をいっぺんに黙らせる効果があると思います。

日本ではマージョリーについては余り知られていません。しかしメディア人ならば、彼女の名前くらい知っておくべきです。

マージョリーは、イギリスの代表的株価指数「FT100指数」採用企業で、初の女性CEOになった人です。ピアソンは傘下に『Financial Times』、『The Economist』、『Penguin』などの錚々たる事業ポートフォリオを持つ出版コングロマリットです。

しかも彼女は元々イギリス人ではなく、アリゾナ州生まれ、テキサス育ちです。少女の頃はロデオ(=カウボーイたちの暴れ馬や牡牛に飛び乗るスポーツ)の選手だったというから、生粋のアメリカ娘です。

その彼女はベイラー・カレッジを卒業した後、米国の地方紙『ザ・ジョージア・ガゼット』の編集者を振り出しにメディアの世界に入ってゆきます。その後、『The Economist』に入社します。

『The Economist』は1843年に、「穀物条例」に反対するために出版された新聞であり、その後、雑誌の形態をとるようになります。歴代の編集長はジェームズ・ウィルソン(初代)、ウォルター・バジョットなど、錚々たる面々です。

かつてカール・マルクスは『The Economist』を「欧州の貴族的財界の内臓に相当する」とまで形容しています。


そのスタイルはスノッブで、お高く止まっており、いつも訓令ないしは叱責調で、イギリス紳士のクソなプライドが、紙面のそこここからプンプン立ちのぼっている、実に鼻持ちならない経済誌です。

ところが……この、最もアメリカ人が苦手とする、厭味ったらしい堅物の雑誌が、目のさめるような大成功をアメリカで収めます。その仕掛け人こそ、他ならぬマージョリーというわけです。

彼女が『The Economist』に入った頃は出版部数は数十万部程度だった筈ですが、現在では150万部に増えており、しかもその過半数がアメリカです。『ビジネスウイーク』その他の経済誌、ニュース雑誌が、軒並み経営危機に陥り、没落しているというのに、『The Economist』は超裕福層をコア読者としてがっちりおさえており、他社の垂涎の的となっています。

この成功は、『The Economist』のアグレッシブな販売促進プログラムによるところが大きいと思います。つまり最近のメルマガ・ブームみたいに、(メルマガ取っているけど、忙しくて読めてない。兎に角、量がすごい。自分が消化できてないものを……キャンセルするか?)という、知識人にありがちなうしろめたいキモチを巧みに煽ってゆくことで、オフィスのレセプションやリビングの「コーヒーテーブル備えつけ雑誌」として不動のインテリア装飾品の地位を獲得したわけです。

マージョリーは『The Economist』での成功を背景として、ピアソンの社内で出世の階段を駆け上って行きました。

ピアソン傘下の新聞、『Financial Times』も硬派なので、このピアソンの黄金時代を築いた功労者であるマージョリーがツイッターの取締役になると、マスゴミとしては、今後、軽い気持ちでツイッターをdisれなくなるわけです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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