時価総額ベースで世界最大の上場石油会社であるエクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)が米国の「原油の輸出は、原則禁止」という法律を改正するように働きかけ始めているとウォールストリート・ジャーナルが伝えています。

エクソンはもともとスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーと呼ばれていて、ロックフェラーの寡占的石油企業、スタンダード石油の一角でした。(モービルのルーツはスタンダード・オイル・オブ・ニューヨークです)

現在のアメリカの法律では原油、天然ガスなどのエネルギーを、付加価値を付けないまま輸出するのは違法です。ただ天然ガスは巨大な冷却装置を使って液化天然ガス(LNG)のカタチにすればケース・バイ・ケースで輸出許可がおります。

エネルギーの輸出に反対するのは化学会社などの大口需要家、ならびに消費者団体などです。

エクソン・モービルの関係者は2015年までに米国が世界最大の産油国になると見ています。またシェールオイルが新しい原油の供給源にアクセスすることを可能にしたので、とうぶん石油が枯渇することはないとしています。

現在、アメリカは一部の原油をカナダに輸出しています。これは理想の姿ではありません。なぜならカナダ自体が巨大な産油国であり、自国で消費する原油以上の生産能力を持っているからです。それではなぜカナダだけに輸出がOKかといえばそれは北米自由貿易協定(NAFTA)という自由貿易協定があり、「エネルギーの輸出は、原則禁止」というアメリカの国内法よりもっと高次のレベルで自由貿易が認められているからです。(なおTPPが成立すれば、同じことが加盟国におこります)

そこで出て来るのが「米国内で原油がだぶつきはじめているのでは?」という懸念です。リーマンショック以降にアメリカでシェールガスの増産が進んだ時、価格が崩壊しました。

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それで天然ガスは儲けが薄くなったので、業者はシェールオイルにこぞってシフトしたのです。

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このシフトに成功したEOGリソーセズ(ティッカーシンボル:EOG)やパイオニア・ナチュラル・リソーセズ(ティッカーシンボル:PXD)などの業者の株価は伸びました。

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しかし最近はそのシェールオイルもすこしダブついてきている印象があります。これを反映してEOGやPXDの株価も下がってきています。


エクソン・モービルはシェールガス、シェールオイルの商機には乗り遅れました。そこでXTOエナジーを買収することで後からこのゲームに参入したわけです。でも現在はシェールを開発するノウハウを取得しています。

話が脱線しますが、エクソン・モービルの本社はダラスの郊外にあり、セントラルパークに匹敵するような広大なキャンパスのなかに「ぽつん」と近代美術館のような瀟洒な建物が立っています。

ところがこの本社の敷地の下には巨大なシェールガス田があることで知られているのです。実際、エクソン・モービルの敷地の外では、零細業者のリグが稼働しています。エクソン・モービルの経営陣は、ある日、自分の本社のすぐ外にオイルリグが立ち、シェールガスが生産され始めたにもかかわらず、その変化にぜんぜん気が付きませんでした。なぜなら「アメリカには、もう有望な油田は無い」という凝り固まった発想が、頭から抜けなかったからです。

後になってシェールガスの重要さに気が付いたエクソン・モービルは、自社でシェールガスの生産を試みますが、エンジニアたちから「エクソンには、そのノウハウがない」と知らされ、暗澹たる気持ちになります。テキサスでも最大級の、シェールの上に本社があるのに、自分ではなにもできず、指をくわえてシェールブームを傍観する他ない……これはテキサスのオイルマン達にとっては美味し過ぎるジョークでした。エクソン・モービルは、その後、XTOエナジーを買収することで反撃に出て、今ではシェールのメジャー・プレーヤーの一人になっています。しかし折角、シェールガスが眠っていることがわかっていても、生産ノウハウが無ければ猫に小判に等しいという事実は、エクソン・モービルのこのエピソードからもわかると思うのです。

世界で最も沢山のシェールが眠っているのは中国です。でも現時点では僕は中国のシェール開発力に関しては、大いに疑問を持っています。アメリカでもこの技術を完成させるまでに20年近くの歳月と数知れない試行錯誤がありました。だから「明日からでも、すぐ生産できる」というのとは、わけが違うのです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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