最近、中国が尖閣諸島を含んだ防空識別圏を設定したり、米国のミサイル巡洋艦が中国の艦船から進路妨害を受けるなど、「東シナ海波高し」的なムードになっています。

これを「最近、いまひとつ景気がパッとしない中国が、庶民の不満の矛先をそらすためにやっているのではないか?」と考えてしまいがちです。

確かにそういう側面もあると思うけど、僕が心配しているのは、むしろ日本の相対的な地位低下です。

下は中国、日本、韓国のGDP(金額ベース)を合計し、それぞれのシェアがどう推移してきたかを示したグラフです。

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これを見るとこの3国の中に占める日本のシェアは1990年の80%強から大幅に縮小したことがわかります。

それもそのはず、過去26年間の平均GDP成長率を見ると中国が9.7%、韓国が5.1%、日本が1.18%と、近隣諸国に大幅な遅れをとっています。

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日本の影が薄くなっているのは、単に付加価値の低いローテクな産業だけではありません。半導体のような分野でも、日本は大きくシェアを落としています。

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上のグラフではアメリカも半導体を生産しなくなっているのですが、これはアジアのファウンドリーに半導体の製作を下請けに出しているからです。日本のエレクトロニクス業界は垂直統合的なビジネス・モデルへのこだわりが強く、アメリカのシェア・ダウンとは本質的に異質の問題を抱えているわけです。


逆の言い方をすれば中国は下請けの立場で、発注主(一例:アップル)の存在は欠かせないし、顧客としてのアメリカの存在も欠かせないわけです。だから嫌でも商売しなければいけない。それと同じことはアメリカにも言えて、中国の安い労働力が無くなればアメリカは困ります。

このような複雑なカンケーは、『セックス・アンド・ザ・シティ』が流行らせた、「フレネミー(Frenemy)」、すなわちフレンドであると同時にエネミー(敵)でもある……そういう関係に近いわけです。

お互いがお互いを必要とするという点で、今日の国際政治は帝国主義(Imperialism)とは違います。帝国主義の場合、国内の過剰な生産力や資本を投入する先として、独占排他的勢力圏を設定することが目的でした。植民地は閉じた経済圏を構築するための陣取り合戦だったのです。

これに対して今日の強国間の関係は、どっちつかずの態度(ambivalence)と嫉妬(jealousy)が基本になっていて、アメリカと中国はお互いに相手の事を(うらやましいなぁ!)と思いつつ、相手が自分より裕福で、成功していて、カッコ良いことに関して表面では「よかったねー」と言いながら、ウラでは(コノヤロー)と思っているわけです。

まあ、われわれが日頃Facebookで「いいね」ボタンを押し合うノリと、同じです。

だから、あからさまにならないカタチで、事あるごとに相手をひそかにdisる、そして(ここはあなたの居場所ではないわ。分相応な処へ、下がってなさい!)というオーラを出すわけです。

日本は、そのような米・中の「フレネミーのバトル」で、都合の良い時だけ「一緒にお茶しましょ」と呼ばれる、無害で敵にすら値しない存在に成り下がっているわけです。

かつてオスマン帝国が「瀕死の病人」として列強の操り人形になったことがありました。

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当時の大英帝国にとって、本当の敵はロシアだったのですが、オスマン・トルコはその緩衝材として利用され、ときとしてチヤホヤされたわけです。

僕には当時のトルコの状況と、今の日本の状況がダブって見えて仕方がありません。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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