ボーイング(ティッカーシンボル:BA)の労働組合のうち、最大の勢力を持つ組合、IAMが、労使契約の更新に賛成する票決をしました。

これで2020年から就航が予定されている次世代旅客機、ボーイング777X(トリプルセブン・エックス)はボーイングのルーツであるシアトルの周辺の各工場で生産されることが確実になりました。

ボーイングは以前、コスト削減の目的で本社をシアトルからシカゴに移した経緯があり、それ以来、シアトルの街とボーイングの関係は、ビミョーになっています。

新労使契約は2016年から2024年までの8年間をカバーしています。

今回、労使契約更新にあたって最大の争点となったのはボーイング側が確定給付型年金から401(k)へとシフトしたいと提案したことです。

確定給付型年金とはボーイングをリタイアした元社員が、ボーイングから受け取る年金の受給額が、あらかじめ固定されているタイプの年金を指します。

自分が将来、幾らの年金を貰えるかがおおよそわかるということは、老後の計画が立てやすくなることを意味します。

しかし会社側にしてみると将来、株式市場が下がるなどの何らかの理由で、約束した年金を払えなくなってしまうリスクが残ります。言い換えれば年金の積み立て不足(Unfunded pension liabilities)が発生する可能性があるわけです。

これに対して401(k)は会社が「あなたの将来のリタイアのための積立ファンドとして、あなたが毎月の給与から○万円積み立てるのなら、会社もそれにマッチするカタチで、○万円を指し上げましょう!」というタイプの福利厚生です。

つまり「今、払ってしまいます」という方法です。これは転職することが多いアメリカの労働者の場合、自分がこれまで積み立てたリタイアメント・ファンドを、新しい職場に、持って行ける(portability)という利点があります。

その半面、自分が給与天引きし、さらに会社から同額をマッチングしてもらった将来の年金のための口座における運用の責任は、アナタ個人にかかってきます。すると運用が下手で年金のファンドが傷んでも、誰も責めることはできないのです。

つまり1) 確定給付型年金を取るか、2)401(k)にするか?という問題は、運用のリスクを誰が負担するか? という争いに他ならないのです。

現実問題として、ボーイングの場合、現行の確定給付型年金の下で、将来、払い出しを約束している年金額(Obligations)と、現在の積立額を見ると、約200億ドルも積み立て不足になっています。(下のグラフの赤の部分)

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ボーイングはワシントン周辺で8万2千人を雇用しており、777Xの生産には1万2千人が従事すると見られています。単価3.2億ドルの777Xは去年11月のドバイ・エアショウでデビューしましたが、既にこれまでに280機の成約がありました。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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