昨日、アルゼンチン・ペソが暴落したことで世界の投資家のリスクに対する警戒心が高まり、世界同時株安が起きています。

しかし……

今回の世界同時株安の原因が、あたかもアルゼンチンにあるような論調が多いですけど、それは間違っています。

そもそもアルゼンチン株なんて海外の投資家は殆ど持っていないし、アルゼンチンの対外債務も微々たる金額です。

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アルゼンチンは、あくまでも「炭鉱のカナリヤ」であり、最近、グローバル・キャピタル・マーケッツという炭鉱に有毒なガスが充満しはじめ、その関係でイチコロに逝ってしまった、哀れな犠牲者に過ぎないのです。

実はこの暗い穴蔵の中には、巨象(Elephant in the room)が居るのです。その巨象とは、中国のシャドー・バンキングです。

この巨象が、臭いオナラをしたので、回りのみんなが、酸欠状態になっているわけです。

そのオナラとは、1月31日に償還期限が来る、4.96億ドル相当の信託商品です。

このファンドをアレンジしたのは中国工商銀行ですが、この信託商品を発行することで資金を借りた山西省の石炭会社は、もう1年以上も前に倒産しています

中国工商銀行は「その尻拭いは、しない」と拒否しているわけです。

そもそも中国の銀行が、山一証券の「飛ばし」にも似た、簿外の取引に走った理由は、皮肉にも中国政府が暴走する過剰融資を抑え込みにかかったことが遠因です。

中国政府は信用バブルを未然に防ごうという意図で、融資の総量規制に乗り出しました。ところが中国の銀行は銀行本体からの融資という、帳簿に乗るカタチでの融資を続けるとお役人さんの心証を悪くするので、ファンド商品というカタチで、銀行の本体勘定とは水を切って簿外の信用供与を続けたわけです。

このため5年前は銀行の融資が中国の融資シェアの7割近くだったのが、今ではそれが4割程度に下がっています。残りは、魑魅魍魎たる高利貸しが関与する、わけわかんないファンド商品ということになってしまったのです。

これは敢えて不正確な比喩をすれば、商工ファンドみたいな連中が跋扈して、融資市場を席巻している構図です。

彼らの中には実質的に40%近い金利を要求している貸し手も居ます。

正規の銀行システムの歯車が止まってしまったことを良い事に、それらのわけわかんない仕事師たちが、『ナニワ金融道』顔負けの暗躍状態になっているのです。

金融行政は、大きく分けて「指導」によるアプローチと金利操作などの「市場」によるアプローチがあるけれど、このうち「指導」によるアプローチは、それらの暗躍する仕事師たちから、完全にせせら笑われてしまったのです

そこで中国政府は引き締め気味の金融政策を堅持することで「市場」によるアプローチで冷やすことをやってきました。これは深慮ある方法です。

ただこの方法は景気にとってはマイナスです。

中国経済の減速は、中国をアテにしている多くの新興国の経済にも悪影響を及ぼします。

今回のアルゼンチンの危機が、香港上海銀行の出している中国製造業購買担当者指数(速報値)の悪化をきっかけとして起きたことは、だから偶然ではないのです。

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原因と結果の因果関係を、取り違えないように。

P.S. 中国工商銀行の幹部はダボスの会議の合間にメディアの取材を受け「中国工商銀行が尻ぬぐいしないという態度を示すことは、投資家にとって良い薬になるだろう」とコメントしました。

SINA FINANCEが行ったユーザー・アンケート調査結果を見ると、中国の投資家たちは、そうは考えていないようです(笑)

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問題は、一度、デフォルトが容認されると、今後、信託商品の組成販売が極めて困難になり、それがいままで自転車操業的に借り換えを繰り返してきた既存の借り手の資金繰りの途を断つことになりかねない点です。

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(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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