米国のバイオテクノロジー・セクターの新規株式公開(IPO)が、ゲノム・ブームに沸いた1990年代末期より過熱しています。

昨日デビューしたダイサーナ・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:DRNA)は初日+207%と、バイオIPOでは2000年以来最大の上場初日上昇幅を記録しました。

けさはこの勢いに乗ってウルトラジェニックス(ティッカーシンボル:RARE)が当初初値レンジ19から20ドルより高い21ドルで値決めされ、取引開始となります。

来週末までに11のバイオ企業のIPOが予定されており(IPO全体の52%)、短期間でこれだけ多くのバイオ企業がデビューするのはゲノム・ブームの2000年8月以来です。

別の見方をすれば、年初来バイオ株IPO調達総額9.4億ドルは、過去5年のバイオIPOの調達総額に匹敵します。

普通、このようなIPOラッシュは需給悪化材料であり、また相場が過熱し過ぎていることの証です。

ただ今回のブームは90年代のゲノム・ブームとは根本的に異なります。当時はゲノムが創薬に際して新しいエッジを提供するのではないか? という漠然とした希望で、バイオが囃されたわけです。つまり新薬の承認とか、利益には全く裏打ちされていませんでした。その点、今、日本でiPS細胞やSTAP細胞を囃しているのと酷似しています。

これに対して現在のアメリカのバイオ・ブームは新薬の承認、売上高の伸長、EPSの伸びに裏打ちされています。言い換えれば「バイオ株が利益の伸びに照らして割安だから」買われたわけです。

裏を返せば、1990年代のゲノム創業ブームの後で、各社は10年以上も研究開発に打ち込み、それらの大部分の企業が創薬出来ずに消えてゆき、やっとの思いで新薬を承認された企業が、ブームの原動力になっているのです。

先ずそれらのバイオ企業が業績面で従来型の薬品株の業績を圧倒的に凌駕し、続々大型株へと成長し、その成功を見て、若い企業のIPOウインドウがようやく開いたわけです。

この関係で2011年と2012年にIPOしたバイオ株は、これまでのトータル・リターンが268%と、グループ全体として極めて優秀な成績でした。


今回の米国のバイオ・ブームに特徴的な点は、デカい疾病分野(=つまり患者数が多い)ではなく、患者数の少ない、希少(レア)な病気を治す、ニッチ薬に注目が集まっている点です。

それらの希少な難病は、これまで創薬コミュニティから顧みられて来ませんでした。なぜなら患者数が少ないので「カネにならない」と思われてきたからです。

なぜそれらの希少な難病が発生するかのメカニズムがかなり理解されていて、そのためにはどうすれば良いか? ということもある程度メドが立っている……だけど面倒くさいので、研究しない、、、そういう、今、眼前にぶら下がっているチャンスを、米国食品医薬品局がルール変更し、インセンティブを増すことで研究奨励したわけです。

まるで「入れ食い状態」のように続々と新薬が登場しているのは、だから偶然ではないのです。

「時代はレア(RARE=希少)だ!」

そういう掛け声の下、今、ニッチなバイオ・ベンチャーが続々起業されています。日本人はシリコンバレーと聞くと「ソーシャル起業か!」と想起するけど、今、本当にシリコンバレーでホットなのは、テックではなくバイオ・ベンチャーなのです。

とりわけ希少な難病の分野では;

ダイサーナ(DRNA)昨日IPO
ウルトラジェニックス(RARE)本日IPO
オースペックス(ASPX)
ユニキュアー(QURE)


がラインナップされています。去年IPOされた希少な難病分野での企業は:

アクセレロン(XLRN)
エージオス(AGIO)
エピザイム(EPZM)
PTC(PTC)


などです。

希少な難病以外の分野でIPOラッシュなのは痛み止め(pain relief)の分野で:

カラ(CARA)
トレベナ(TRVN)
イーガレット(EGLT)
フレクシオン(FLXN)


などになります。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)

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