リーマンショックとギリシャ危機という二つの大きなイベントを経て、欧州でどの国がリーダーシップをとるか? という問題に関し、イギリスとドイツの立場の差が鮮明になりました。

イギリス国民の心は、欧州連合(EU)から離れました。イギリスは2015年に選挙があるし、2017年にはEUのメンバーシップに関するレファレンダム(国民投票)も予定されています。

こうした欧州の未来にとって重要なイベントの日程を踏まえ、ドイツのメルケル首相とイギリスのキャメロン首相2月27日からロンドンで会談します。

今回の一連の危機を通じて、両国の経済の立ち位置はどう変わったのでしょうか? そしてそれぞれの国の目指すところはどこなのでしょうか? まず、そのへんから見ることにします。

下はドイツのGDPです。

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欧州財政危機の間を通じてプラスを維持し、EUの安定に寄与しました。

次はイギリスのGDPです。

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金融センター、シティを抱えるイギリスはリーマンショックの後遺症が大きかったですが、それから立ち直り、景気はしり上がりに良くなってきています。

次はドイツの消費ならびに政府支出です。

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ドイツはもともと政府が放埓な出費をしていなかったことから、危機を通じても政府の支出のパターンには大きな切り詰めは見られませんでした。因みにドイツのGDPに占める消費比率は57%であり、これはそれほど多くありません。

次のイギリスの消費ならびに政府支出です。

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イギリスの方がドイツより国家財政の内容は悪いので、或る程度の切り詰めが出ました。それから最近は消費が好調なのが目につきます。因みにイギリスのGDPに占める消費比率は66%で高いです。

次はドイツの輸出と輸入です。

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危機を通じて安定的な輸出でEUのスタビライザーの役目を果たしました。因みにドイツのGDPに占める輸出比率は52%と高いです。

次はイギリスの輸出と輸入です。

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輸出はイギリスの強味ではありません。GDPに占める輸出の割合は32%に過ぎません。

次にGDP成長への寄与度を見るとドイツの場合、輸出から内需へのシフトがおきていることが判ります。


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イギリスのGDP成長への寄与度を見ると消費がドライバーになっていることがわかります。

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ドイツの消費が期待通り上手くGDPのけん引役を果たせた理由は雇用の安定にあります。

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イギリスの失業率はドイツより高いですが、今、改善の方向へ向かい始めています。

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今回の危機を通じてドイツの賃金がしっかり上昇していたことは消費者のセンチメントの大きな支えになりました。

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イギリスの賃金は調整局面を迎えています。

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ドイツは危なげない貿易黒字を出しています。

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一方イギリスはサービス立国なので、貿易収支は悪いです。

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ドイツの構造的財政収支は健全です。

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イギリスの構造的財政収支は悪いです。

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ドイツは政府負債を圧縮しています。

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イギリスの政府負債は増加傾向にあります。

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これらのデータ・ポイントから浮かび上がって来ることは、ドイツは製造業ならびに輸出を中心とした国作りに邁進しており、そのためにはEU圏という市場、ならびにユーロという旧ドイツマルクよりは弱い通貨の両方を手に入れる必要があります。それらがヨーロッパはひとつであるべきだという価値観を生んでいるのであり、その盟主としてのドイツの立場を決定付けているといって過言ではないでしょう。

一方、イギリスは金融サービスなどのソフト・エコノミーの旗手であり、ニュー・ビジネスの盛衰も、アメリカを彷彿とさせるような、変わり身の早さを備えています。つまり産業界や雇用市場のスピード感は、イギリスの方が勝っているわけです。それは自由闊達な空気を必要とします。だから統合ヨーロッパから、いろいろ官僚的なルールを押しつけられたくないという気風があります。


(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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