ウォール街の格言に「最初の損切りがベストの損である」というのがあります。

これはつまり傷口が大きくならないうちに、見込み違いのポジションを早々に処分すべしという意味です。

こういう風に書くと(いや、そんなことは決してない。その正反対で、ヤラレたらナンピンして平均買付単価を下げるべきだ)と憤る読者も居るでしょう。

この問題に関する僕の考え方は、以下の通りです。

先ずあなたが或る企業の成長性や業績の伸びや株価が右肩上がりに上昇している様子に着目してその株を買ったのなら、自分の見立てに反して、買ってすぐに8%くらいヤラレたら、すぐに逃げるべきです。

別のケースで、あなたが或る企業の配当利回りや潤沢な営業キャッシュフローなどに着目してその株を買ったのなら、ヤラレてもしばらく様子を見ていてOKです。

なぜこんな区別をするのか?

それは成長性、業績の伸び、株価が右肩上がりに騰がっているなどの特徴は、どちらかといえばグロース・ストック、つまり成長株によく見られることだからです。

成長株は比較的若い会社が多く、伸び盛りです。しかし若い企業は、時として大きな経営判断の間違いを犯しやすいです。その会社が提供している製品やサービス自体が、未だ目新しく、したがって需要の予想が立てにくい場合もあるでしょう。

また「これは伸びる会社だ」と多くの投資家が期待して投資している関係で、株価収益率(PER)などのバリュエーションが高い場合が多いです。

若しそんな会社がチョットでもミスしたら、株価は大きくさがります。

いま仮にその会社が一株あたり利益(EPS)を10¢ほど予想より下回ったとします。若しその株のPERが70倍(これはフェイスブックのPERにほぼ相当します)なら、10¢×70で、理屈上、株価は7ドル下がって当然です。

いま別の会社がEPSを10¢ほど予想より下回ったとします。若しその株のPERが20倍なら、10¢×20で、理論上、株価は2ドルしか下がりません。


これは極端に単純化した説明なので、実際はもっと色々な考察を交える必要が出てきます。でもPERが高いことが株価に与えるダウンサイド・レバレッジを心に刻んでおく必要があると思うのです。

厄介なことに、株価は「なにも悪い材料がまだ出ていないのに」下がるものです。下げている理由がちゃんとわかっていることの方が少ないわけです。こういう場面でこそ、経験ある投資家と、未熟な投資家の差が、歴然と出てしまいます。

経験ある投資家は「なぜ下がっているかわかんないけど、兎に角、売っておこう」と手遅れにならないうちにポジションを減らします。これは高PER株ほどそうです。

そのウラにある心の動きは(オレは情報収集力が足らないから、悪材料が見えていない。でも世の中には自分より賢い奴、良い情報を持っている奴が、必ず居る。そういう奴が、今、逃げているに違いない。それなら自分も少し逃げておこう)というものです。

自分の理解できないもの、見えていないものに対する畏怖の念……この謙虚さが意地を張らない投資態度になるわけです。

これに対して未熟な投資家ほど(オレの見立てに間違いはない)とか(この成長ストーリーは素晴らしいから、きっと投資家がそれに気付く時が来る。それまでは我慢だ)という発想をするわけです。

でも世の中に自分だけにしか見えていない凄い成長ストーリーが、そんなにたくさん、転がっているでしょうか? この投資家の自信は、一体、どこから湧いてくるのですかね?

一方、配当利回りや営業キャッシュフローの潤沢さに着目して買う株は、多くの場合、既に「出来上がっちゃった」会社である場合が多いです。その分、退屈だし、株価はそうそう騰がりません。そんな値動きのマイルドな株を、ちょっと下がったというくらいでイチイチ気にして降りていたのでは、手数料ばかり損してちっとも効率が良くありません。

企業が減配する頻度は、収益が予想を下回る頻度よりはるかに少ないです。そもそも配当を目当てに買ったのなら、減配にならない限り鷹揚に構えていればいいのです。