最近のシリコンバレーは、見ていて全然、楽しくないです。

例えば人材獲得合戦における談合問題

結局、法廷で故スティーブ・ジョブズやグーグルの幹部などの醜い密約が世間に晒されるのを恐れた各社は、ソッコーで示談に応じました。

人材はバレーのテクノロジー企業にとって最も重要な経営資源であり、そのコストは高騰しています。

その一方で、それから得られるリターンは、青空天井ではありません。

一例として、グーグルのコアビジネスである、広告から得られる収入は、単に旧メディアに割り振られていた広告費を奪うことで成立しているのであって、パイそのものが急増しているのではありません。

すでにテクノロジーは我々の生活の中で「チョイ役」ではなく「主役」を演じています。

でも「もっと、もっと」という要求には、おのずと限界があります。

家計の中に占める、テクノロジーに対する出費は、たぶんピークをつけたと思われます。

それでも各社は「守るべきマーケットシェア」のためにあくせくしています。

企業としてのビヘイビアは、スタートアップのような軽快さではなく、ちょうどロックフェラーのスタンダード石油のように寡占的で、排他的にならざるを得ません。今回の人材談合問題はその好例です。

大体、企業がこういうビヘイビアをするようになったときは、相場は終わります

相場は予定調和ではありません。

理詰めで考えて、失策をしないように細心の注意を払って、手堅く無難なコースを行く……これはシリコンバレーのエトスと正反対の態度であり、それをバレーのリーダー企業が無意識のうちに率先してやっているわけです。そのコミカルさ、そこはかとない哀しさに気が付かないようでは、まだまだ投資家として青いです。

別の言い方をすれば、今後グーグルやアップルやフェイスブックに、恐ろしい下げ相場が来るということです。

スティーブ・ジョブズはリード・カレッジに行ったものの、両親が一生かけて貯めた貯金のすべてがどんどん学費に消えてゆくのを見て大学を辞める決心をします。お定まりの成功コースに背を向けるわけです。

「これは自分が一生の中で下した決断の中でベストだった」

彼はそう回想しています。

必修コースに出る必要がなくなったので、自分の興味や関心に基づいて、お習字の授業に出たりします。これがアップルの美しいフォントにつながった話は有名です。

ジョブズが主張していることは、点と点を結ぶことは、過去を振り返ってはじめて「ああ、そういうことだったんだ」とわかるということで、それをあらかじめ想定しながら利口にたちまわることはできないということです。

ジョブズがアップルから追い出されたとき「成功しているということの重さ、息苦しさが、また一から始めるという軽さに置き換わった」のです。

「そこではすべてが不確実であり、そうであるがゆえにもっとも創造的な仕事が出来た」わけです。

シリコンバレーがやらなければいけないことは、いままでの成功を延長しようとすることではなく、リセットボタンを押してゼロから新しい発想をすることです。

まあ、各社がそんな経営の方向転換をするまでもなく、市場の力学が、創造的破壊をもたらしてくれるわけですけど。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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