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市場に対する影響力の強いアメリカの投資週刊紙『バロンズ』の最新号のカバー・ストーリーはインドです。

インドは現在、総選挙の真っ最中であり、野党BJP(インド人民党)が勝つと予想されています。

その場合、グジャラート州の知事を長く務めたことのあるBJPのリーダー、ナレンドラ・モディ氏がインドの首相になる可能性が強いです。

それは10年に及ぶ国民会議派の政権が終わることを意味します。

国民会議派はガンジー・ネール一族の政党であり、由緒正しいのですが、経済運営は失敗だったというのが内外の評価です。

モディ氏のスタイルは、ワンマンで、なおかつ回教徒を蔑視していると言われます。ただビジネスの振興に関しては定評があります。

『バロンズ』は、海外の投資家がインドに期待を寄せているもうひとつの理由として新しいインド準備銀行総裁、ラグラム・ラジャンを挙げています。

ラジャン総裁は2003年から2006年まで国際通貨基金(IMF)のチーフ・エコノミストを務めた後、シカゴ大学ブース・ビジネススクールの教授になりました。リーマンショックを予見した人としても知られています。

ラジャン総裁はインフレ・タカ派として知られており、特に食品などの庶民の生活に直結した品目の値上がりを抑えることに力を注いでいます。

BJPが政権を取った場合でも、ラジャン総裁は継投すると予想されています。

モディはロナルド・レーガンの「小さな政府」というスローガンに似た発想でインドを運営すると考えるウォール街関係者もいます。

インドは人口でこそ中国と肩を並べますが、経済の規模でははるかに遅れを取っています。またこれまでさんざんミスマネージメントされてきました。


逆に言えば、キャッチアップの余地が大きいというわけです。中国のような信用バブルの問題が無い点を評価する投資家も居ます。

以上が『バロンズ』の記事の要約で、ここからは僕の考えですが、インドは過去にもBJPの登場で経済改革への期待が高まったことがありました。

でも結局、変化をかたくなに拒む因習的な国民性に阻まれて、改革は上手く行きませんでした。

だからモディ氏という、たったひとりのリーダーの登場で、インド全体がガラッと変わるという風には考えにくいです。

またインド経済の基礎的要件は極めて脆弱であり、経済運営をひとつ間違えば、ルピー安など危機に見舞われやすい体質となっています。

そこで簡単にファンダメンタルズを振り返っておきます。まずGDPです。

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IMFの予想では今年から再加速すると見られていますが、実績的にはズルズル成長が下がってきたことがわかります。

次はインフレです。

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高止まりしています。

構造的財政収支は慢性的に赤字です。

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政府債務の圧縮は、今後の努力にかかっています。

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経常収支は慢性的に赤字です。

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つまり期待の高まりとウラハラに、実績としてのインド経済には、みるべきものは無いのです。

そのことは、若しBJP主導の改革がとん挫すれば、マーケットが大きく下げるリスクを孕んでいることを意味します。


(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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