今日欧州中央銀行(ECB)が大方の予想通り、一連の緩和措置を発表しました。それらは:

1.政策金利をこれまでの0.25%から0.10%に引き下げる
2.預金ファシリティ金利をこれまでの0%から-0.10%に引き下げる
3.限界貸付ファシリティ金利をこれまでの0.75%から0.40%に引き下げる
4.ターゲットを絞ったLTROを4,000億ユーロ実施する
5.ABS買い入れにむけての準備を始める
6.SMPの不胎化を止める


などです。事前に噂された方策で、今回パスされた措置は量的緩和政策(QE)だけでした。

このように、およそ市場参加者が予期していたあらゆる「実弾」を、片っ端からぶっ放した割には為替市場は「行って来い」で終わりました。

ユーロ/ドルは一時1.35024まで急落したものの、その後は反発し、逆にECBの発表前の水準である1.360より高い水準まで買われました。今日の高値は1.36708までありました。これを書いている時点(日本時間金曜日朝4時)では1.365付近でトレードされています。

昨夜早く就寝した人が朝起きてみれば「え、何もなかったの?」というくらい前日と変わらない水準に落ち着いたわけです。

もちろん、発表の直後、そして9時半のドラギ総裁の記者会見の間はドラマがあり、トレーダーたちは久しぶりのボラティリティで、かきいれどきだったことは言うまでもありません。

でも一夜明けてみれば、Much Ado about Nothing、つまり何という事は無い些細なことでから騒ぎしたという感想を抱かずにはおれないのです。

マイナス金利実施は、新聞の見出しとしてはセンセーショナルですけど、実務の立場からすればbusiness as usualだし、これで銀行が姿勢を高め、積極的に貸し始めるか? と言えば、そんなことは無いと思います。

ターゲットを絞ったLTROを実施するのはピンポイントで苦しんでいる一部金融機関を助けることにはなりますが、今回の4000億ユーロという金額は前回の半分以下で迫力に欠けます。

SMPの不胎化の中止も、それで市場に供給される資金はスズメの涙ほどの金額です。

つまり今回の一連の発表は、実体経済に直接働きかけるというよりは、為替市場に対して「ユーロ安を演出しますよ」というシグナルを送っただけにすぎないのです。

その意味では数時間も経たないうちに市場の望んだ通りの「満額回答」をした効果が消えてしまったことは残念な展開でした。

しかも気が付けば、「実弾」は殆ど撃ち尽くしてしまっている……

それは、これまで畏怖されてきたドラギ総裁が、はじめて投資家から舐められ、tractionを失った瞬間なのです。