先週、コリンシアン・カレッジ(ティッカーシンボル:COCO)が閉校するのではないか? という噂が、ウォール街を駆け巡りました。

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同社は営利大学(for-Profit Colleges)の大手です。営利大学とは、イメージしやすいように敢えて不正確な喩えをすれば、日本の専門学校のような存在です。獣医さん、プログラマー、看護婦さんなど、すぐに仕事に役立つスキルを教え、資格を取得することを助けることを、営利目的で提供する民間企業を指します。

民間企業なので、当然、株式を上場している会社もあるわけです。

このような営利大学は、生徒数ベースで見れば、アメリカの高等教育で学ぶ学生の約10分の1を占めています。営利大学がブームになった背景にはコミュニティ・カレッジが地方政府の財政悪化で拡張できないという事情があります。

高等教育に力を入れよう! という政府方針で、連邦奨学金制度が充実されたのを見て、はじめから連邦奨学金をムシることだけを念頭に置いた、営利目的の大学が続々と設立されました。

それらの企業は卒業生の就職率を偽り、甘い言葉で生徒を勧誘しました。

しかしそのような営利大学の卒業証書は、就職の時、余り役に立たないし、学資ローンを負った学生は、その返済に窮することが多いです。

営利大学の卒業生の88%は借金をかかえて卒業します。

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これは何を意味するかといえば、営利大学への入学を選択する学生の大半はお金が無く、「手に職を付ければ、将来、返済できるだろう」という甘い想定の下に、連邦奨学金制度をアテにして進学することを意味します。


彼らのローン債務額は平均すると408万円です。

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しかし愚にもつかない資格を取得しても、それで就職が有利になるとは限りません。結局、就職できず、ローンも返せない若者が増えているのです。

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もともと高校を出て職探ししたけれど、就職できなかったというような、消極的な動機から営利大学へ進学する学生が多いので、ちゃんと卒業するのは全体の3分の1という有様です。

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こうした状況を見て、「営利大学は詐欺(scam)であり、連邦奨学金制度を悪用することを目的として設立されており、経営者が株式公開益を得て、後のデフォルト負担はすべて納税者に押し付けるとんでもない奴らだ」という批判が出ました。

米国教育省(U.S. Department of Education)は有利な就職を確保する原則(Gainful Employment Rule)と呼ばれるルールを作り、卒業生に多額の学資ローンを背負込ませる学校には連邦奨学金を支給しない考えを打ち出しました。

同様の試みは2012年にもなされたのですが、その時は連邦裁判所が違憲の判断を下し、却下されています。

連邦奨学金制度改革法案が出された場合、それが議会を通過し、成立する可能性は低いです。その間、連邦奨学金制度が悪用され、悪意ある営利大学の経営者が無知でウブな学生にどんどん借金を背負込ませ、そのツケが政府に回ってくることを防ぐため、オバマ政権は「いつ連邦奨学金制度をストップするか、わからないぞ!」というプレッシャーをかけることで株式市場の投資家を脅す戦法に出ているわけです。

もともと学生には先立つものが無いわけですから、連邦奨学金がストップされれば、営利大学の売上高が瞬間蒸発することを意味します。

ショート筋は、営利大学の立場の弱さとオバマ政権の「放置プレイ」戦略を嗅ぎ付け、営利大学の株を空売りしているわけです。

学生を食い物にしている略奪的営利大学が、逆にウォール街のヘッジファンドたちの餌食になっているという、実にポエムな天誅が下っているというわけ。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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