ロシアがウクライナとの国境に約四万人の兵隊を集結しているというニュースがもたらされました。ストラトフォアによれば、その内訳は東ウクライナの都市、ルハンスクから近いロシア国境付近に二万、そして国民投票でロシアに今年編入されたクリミア半島に二万という布陣です。今回、ルハンスクの近くに動員された部隊は、ロシア各地から集められた兵隊で、今年の冬にウクライナ情勢が緊迫した際、急いで動員された、もともとウクライナとの国境線の近くに駐屯していた軍隊とは別だそうです。

それは何を意味するか?

実際に作戦が始まった場合、ロシアは今回招集をかけた四万の兵士に加え、ウクライナとの国境近くに駐屯している四万の兵士、合計八万を48時間以内にルハンスクに送り込めるのです。

ロシアは国連に対して臨時会合を開くことをリクエストしました。ロシアは今回の派兵を「平和維持軍」という名目で派遣する考えです。ストラトフォアは、ロシアが平和維持軍を派遣すれば、北大西洋条約機構(NATO)も同様の名目で彼らの平和維持軍を派兵することができ、両軍が東ウクライナで睨み合うというシナリオに発展する可能性があるとしています。実際、1999年にはコソボでロシア軍とNATO軍が対峙する局面がありました。

これからウクライナは降雨で地盤がぬかるむ季節に入ります。すると進軍は困難になります。冬の間は、ロシアからウクライナを経由して欧州各国へ輸出される天然ガスも需要期に入るため、交渉のレバレッジという点ではロシアにしてみれば厳冬期の方が遥かに有利です。

そんなわけで今は余り動きたくない時期なのですが、ウクライナ政府軍が勢いに乗っているので、ドネツク、ルハンスクの二つの都市を、若し親ロシア分離主義者が失うことがあると、ロシアでの世論は「ふがいないプーチン」という方向に傾くリスクがあります。

もちろん、ロシアが国境で増員しているのは、実際には攻め込まないけれど、ウクライナ政府軍をけん制するという意味もあります。つまりロシアとしては、攻め込む、あるいは兵を引くという両方の選択肢を持てるようにしているわけです。

ウクライナ情勢の緊迫は、欧州各国のビジネス・センチメントに影を落とし始めています。特にギリシャ、ドイツなどで経営者、消費者のマインドの後退が顕著です。欧州の景気回復は、ここへきて失速するリスクが出ていると言い直せるでしょう。それは目先、ドル高に振れやすいことを意味すると思います。