ニューヨークタイムズが伝えるところによるとドイツの世論調査で70%の回答者が「ロシアに対してもっと経済制裁を強化するのは仕方ない」と回答したことがわかりました。また「ロシアは信頼できるパートナーだ」と回答した人は15%にとどまりました。何よりも信頼関係を重んずるドイツ人が(ロシアは信用できない)と考え始めていることは重要です。

ドイツはロシアと経済的な結びつきが強いです。それはドイツがロシアから天然ガスの供給を受けているからにとどまらず、ドイツの工作機械などの輸出先としてもロシアはお得意様だからです。とりわけドイツの輸出型経済の屋台骨を構成している製造業などの中小企業のうち、実に7000社がロシアとビジネスをしています。

ロシアはロマノフ朝の頃から政略結婚でドイツ人の妃を迎えるなど、皇室レベルで交流がありました。

さらに今日のドイツ国内で最大のマイノリティー・コミュニティはロシア系であり、350万人がロシア語を話すことができます。

メルケル首相自身、東ドイツで女学生だった頃、表彰を受けるためモスクワに呼ばれたこともあります。(当時東ドイツはソ連圏でした)

このようにドイツはロシアと経済的、文化的に結びつきが強いので外交・軍事面でロシアと対峙しなければいけなくなると、フランスや英国に下駄を預け、消極姿勢を取ってきました。

しかしマレーシア航空MH17便が東ウクライナ上空で撃墜された事件あたりを境に、ドイツは「そろそろ自分たちがリーダーシップをとって、ロシアに節度ある態度を取るよう、説得する他無いな」という考えに傾き始めています。



現時点でドイツが考えているのは経済制裁の一層の強化であり、それはドイツ自身も経済的に痛めつけられることを意味します。場合によってはこれまでドイツが独占してきたビジネスの一部を中国などのアジア勢に持って行かれてしまうことも予想されます。

最近、ドイツ国債が高値を更新しているのは、インフレが鎮静化しているということもありますが、それより何より、経済制裁のマイナス効果がドイツ経済を直撃することを投資家が恐れているからに他なりません。

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今後のユーロ圏のGDP物価の動向は、こうした文脈を踏まえたうえで分析されるべきだと思います。


一方、ロシアは東ウクライナに対して人道的支援物資をトラック280台を投入して送りました。これを「人道的支援という隠れ蓑を使い、軍事作戦をする前兆ではないか?」と見る向きもありますが、最も大事なことは、ロシアとしては今後どうにでも動けるように、選択肢を確保し、様子を見るという意味合いが込められているという点です。

若しEU側が人道的支援物資を東ウクライナのドネツクなどに送り込んでいるのに、ロシアから救援物資が来なければ、そこに住むロシア系住民(=多数派です)は「はしごを外された」と感じるでしょう。それはドネツクの陥落を早めるし、ロシアが東ウクライナでの足掛かりを永久に失うことにつながりかねません。

東ウクライナは9月から10月にかけては曇天の日が多くなり、降雨が乾くのが遅くなります。道路はぬかるみ、物資の補給はむずかしくなります。だから冬まで時間稼ぎをする場合でも、今、一旦、支援物資をじゅうぶんに供給しておく必要があるのです。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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