アメリカに長く住んでいると、この国の悪いところもいろいろ見えてきます。そんなわけで、僕は手放しに「アメリカ最高!」という意見は、ぜんぜん持っていません。

ただ、先日、理研が「再生科学総合研究センターの規模を半減する」と発表したニュースには、正直、頭を抱え込みました。

なぜなら今般のSTAP細胞にまつわるドタバタは、単に当事者やその組織だけの問題ではなく、日本の科学教育そのものが内包する脆弱性が原因だと思うからです。

理研は、ピラミッドに喩えれば頂点の部分に過ぎず、このピラミッドは土台部分からひん曲がっていると思います。だから頂上部分だけを「みせしめ」のために罰しても、それは日本を強くすることにはならないのです。

下は世界のIT関連企業の時価総額シェアです。いま、アメリカの株式市場が世界に占める割合が約50%(=但し持合いなどを含まない)であることを考えると、テクノロジーではアメリカが圧倒的に強いことがわかります。

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次にヘルスケアを見ると、やはりアメリカが大きなシェアを占めています。

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毎年のパテントの付与されたシェアを見ると、日本のシェアは下がり気味です。

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日本経済に勢いのあった1980年代には、ポール・ケネディの『大国の興亡』のような本では、アメリカの覇権は凋落し、つぎは日本の出番だということが言われていたと思います。

しかし現実には、そうなっていません。

「もうそろそろアメリカの覇権もオワコンだな」

そう思っている人は、覇権サイクルが、技術革新のサイクル、もっと言えば「知の優位」ということと切っても切り離せないことをわかっていません。そこでは科学のみならず、ヒューマニティの面でも新しい秩序を正当化する卓越した概念や規範が生まれているし、それはグローバルに伝播しうる普遍性を備えているものです。

インターネットやバイオテクノロジーなどの、最も付加価値の高い産業分野で、日本が世界に号令できていないのは、とても残念です。


ついでに言うなれば、シェール革命は、ラッキーとは関係ありません。地面を垂直に数千メートル掘り下がって、そこから今度は水平に数千メートル掘って、しかも10円玉くらいのターゲットにしっかり命中する……そんな精密さで掘ることが出来て、はじめてモノに出来る資源なのです。つまりハイテク技術を駆使しないといけないわけです。

それが証拠にシェールはアメリカ以外にもいろんな場所にあるけれど、ちゃんと生産出来ているのはノウハウをがっちり蓄積出来ているアメリカだけです。

この結果、アメリカの石油生産は下のグラフのように伸びています。

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石油生産のグローバルシェアは、こうなっています。

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天然ガスも増産されています。

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天然ガス生産のグローバルシェアは、こうなっています。

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いま上位に出てきているアメリカ以外の国を見ると、いずれも石油や天然ガスが主な輸出品目です。つまり一国の経済が、ごく限られた天然資源の輸出に完全に依存している格好になっているわけです。これは一流の国の姿ではありません。

ロシアがどんなに威張ったところで、そもそも敵に回そうとしている相手に天然ガスや石油を買ってもらわないと国の台所が回らないというのでは、脅しにも牙がありません。

またシリアやイラクで「イスラム国」が暴れ回っているのに、オバマ大統領は手をこまねいているとして、それをアメリカの凋落と捉える人が多いですが、それはそうじゃないんです。

アメリカは自分の国で使う石油や天然ガスを自分で生産できるから、もう中東はお呼びじゃないんです。

アメリカは旅客機やバイオテクノロジーや金融サービスなど、最も利幅の大きいものを輸出し、しかも軍事費の面でも友好国の面倒を見ています。

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つまりパックス・アメリカーナは全然揺るいでないし、それは新技術の群生的な発生に裏打ちされているのです。

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(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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