スコットランド独立の是非を問う住民投票が、いよいよ今日(18日)行われます。そこで僕の想いは「ちょっとそそる後家さん」に飛んでいるわけです。

「ちょっとそそる後家さん」というのはスコティッシュ・ウィドウズ(Scottish Widows)を指し、これは平たく言えば保険・投信会社です。

同社はもともとナポレオン戦争のとき、出征した夫が戦死し、寡婦となった女性のために基金を設けよう! という動機で始められました。つまり199年もの歴史を誇る、女性のための投資ファンド会社なのです。

とりわけ1980年代からはTVコマーシャルに神秘的な黒いマントを纏ったウィドウをデビューさせ、金融商品を一般の庶民にも身近なものにしました。初代の後家さんは007シリーズのロジャー・ムーアの娘さん、デボラ・ムーアです。その時の伝説的なコマーシャルが下の動画です。



このコマーシャルは、ちょうどイギリスの「金融ビッグバン」でシティが活気を帯びてきた頃にデビューし、財テクをグラマラスな存在にした功績は大きかったと思います。

これ以降、歴代の「後家さん」は:

デボラ・ムーア 1986年~1994年
アマンダ・ラム 1994年~2004年
ヘイリー・ハント 2005年~2013年
アンバー・マルチネス 2014年~

と言う風に受け継がれています。今年はちょうど後家さんが「代替わり」した年で、新しいキャンペーンの制作風景が下の動画に収めされています。



さて、そのスコティッシュ・ウィドウズですが、同社は去年の末にロイズ・グループからアバディーン・アセット・マネージメントに売却されています。

アバディーン・アセット・マネージメントはスコットランドのアバディーンに本拠を置いており、スコットランドの運用会社としてのアイデンティティは一層強固なものになったと言えます。

アバディーンはアクティブ運用に強く、アジアなどのエマージング・マーケットに精通しています。一方、スコティッシュ・ウィドウズは不動産、債券、クウォンツ運用に強いです。このため相互補完的な買収だと言えます。

両社を合わせた現在の運用資産は3,175億ドルで、ロンドン取引所に上場されている独立運用会社としては最大です。

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スコットランドの投信ビジネスの功労者はロバート・フレミングで、彼は1873年にスコティッシュ・アメリカン・インベストメントという会社を設立します。当時スコットランドの港町、ダンディーはジュートの輸出で潤っていました。ジュートで作った砂袋が、アメリカの南北戦争で沢山使われたからです。

しかしそのブームが終わると、ジュート輸出で儲けたお金を運用する先として、新しい投資機会を探す必要が出てきます。ロバート・フレミングはエリー鉄道をはじめとするアメリカの鉄道証券への投資を進めます。(ロバート・フレミングのお孫さんが007シリーズの原作者のイアン・フレミングだというのは面白い偶然だと思います)

当時のアメリカは、今で言えば中国に相当するエマージング・マーケットでした。このようにスコットランドのファンド・マネージャーは昔から積極的に世界に出てゆき、高い成長が見込まれる地域に投資することを身上としてきたわけです。

スコットランドにはアバディーンの他にベイリー・ギフォード、マーティン・カリーなど数々の運用会社が存在します。

リーマンショック後の金融危機に際しては、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)は政府からの救済を受けました。

若しスコットランドが独立していたら、あのような救済は出来なかったかも知れません。その意味において債券のディーリングなどの、資本集約的なビジネスは若し今日の投票でスコットランドの独立が決まれば今後やりにくくなることが予想されます。

しかし資産運用のような知識集約的なビジネスは資本を必要としないので、独立後も影響を受けることは無いと思います。

運用のビジネスで最も重要になるのは人材を確保できるか? という問題です。その点、スコットランドにはエジンバラ大学をはじめとし優れた高等教育機関があります。また昔から世界に対する興味、関心は高く、人材の確保には問題は無いと思われます。


【訂正】
Facebook経由で読者でエジンバラ在住のSaitoさんから次のようなご指摘を受けました。

Aberdeen asset managementに売却されたのは、元Lloyds傘下のScottish widows investmentで、当該CMのScottish Widows保険会社は今もロイズ傘下です。


ご指摘ありがとうございます。