今日は妥当な株価をEPS成長率から求めるやり方について説明します。
最初に断わっておくと、これはあくまでも大雑把な目安に過ぎず、この考え方を金科玉条の如く硬直的に投資判断に当てはめて欲しくないということです。
ただ、ある株の取引されている水準が、大体リーズナブルなのか、それともチャンチャラおかしいかを知る上で、ひとつの参考、ないしは気休めになるという程度の利用価値はあると思います。
まずある銘柄の今年と来年のコンセンサスEPS予想を書き抜きます。これは英語版ヤフー・ファイナンスの個別株のアナリスト予想のページや最近東洋経済から出版された『米国会社四季報』などの情報を使えば良いでしょう。
例えばフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)の場合、下のようになります:
さて、これらの数字を基に、それぞれの年のEPS成長率を求めます。まず2013年から2014年にかけてどれだけ成長したかを計算するには:
という具合です。同様に2014年から2015年にかけての成長率も計算してやると、こちらは24.7%になります。
このようにしてアメリカの主なハイテク株のEPS成長率を計算したのが下のグラフになります。

さて、ここまでは誰でも簡単に理解できると思いますが、難しいのはこうして得られた解を、実際の投資判断にどう援用してゆくか? という実践面でのノウハウです。
上のグラフで「2014年」はカレントイヤー(current year)、「2015年」はアウトイヤー(out year)と投資コミュニティでは称します。
普通、一株当たり利益(PER)を論じる際は、アウトイヤーを使うクセを付けてください。これはただ単純に、「ウォール街の関係者は皆、そうしているから」という理由によります。
次に現在、場で付いている、その銘柄の株価を調べます。フェイスブックの場合、今日の引け値は$78.54でした。株価収益率(PER)の求め方は、株価÷EPSです。すると:
がフェイスブックの2015年のEPSに基づいたPERということになります。
この38.88倍というPERは、高いのでしょうか? それともリーズナブルなのでしょうか?
いまフェイスブックのEPS成長率を見ると今年が84.1%、アウトイヤーが24.7%です。するとフェイスブックのPERを今年の成長率と比べると0.58 0.462倍程度で取引されていることになります。計算式を示せば:
です。次にアウトイヤーの成長率に比べると:
になります。
さて、ここが肝心な点ですが、ウォール街の多くの投資家は「EPS成長率とほぼ同じ程度のPERなら、払っても良い」と考えているという点です。
これは、別に確固とした根拠があっての主張ではありません。あくまでも慣習として、そう感じる投資家が多いということなのです。
EPS成長率とPERが同一ということなら(EPS成長率)÷(PER) (PER)÷(EPS成長率)は「1」になります。言い換えれば、上の計算結果が1以下なら割安で、1以上なら割高というわけです。
それを上のフェイスブックの計算結果に当てはめると、カレントイヤーは0.462だから割安、アウトイヤーは1.574だから割高というわけです。
なぜ同じ銘柄なのに、これほど評価に差が出るのでしょうか? それはフェイスブックの成長率をもう一度グラフで確認すると納得がゆくと思います。つまり2014年は84.1%という急成長をしているので、その急成長ぶりからすれば同社株は割安感があるというわけです。逆に2015年にはEPS成長率が24.7%という風に急ブレーキがかかります。すると他の銘柄の橙色のバーと比較すれば一目瞭然ですけど、24.7%程度の成長を出すと予想される銘柄は、他に幾らでもあるわけです。
フェイスブックの場合、いまモバイルのマネタイゼーション(=売上に結びつけること)がとても上手く行き始めたところです。今年の業績の伸びが素晴らしいのは、そのためです。
でもこれはベースが小さいところからはじまっているので、今年、同社が成功を収めれば収めるほど、来年との比較が苦しくなるわけです。
その意味では、単年度で比較するのではなく、ざっくりと今年と来年の成長率の平均を取って比較した方が同社の成長の実態を上手くとらえることができると主張することも出来るでしょう。
その、ブレンドした成長率に照らしてみると、フェイスブックはほぼフェアなバリューで取引されているということになるわけです。
このようにEPS成長率とPERを比べる際は、その企業がどれだけ小さいか(=小さいほど、成長の初速は高くなります)、一時的な要因が絡んでいるか(=若い企業ほど、そのような特殊要因にEPSが振り回されます)など、留意しなければいけないことが沢山あるのです。
だからIPOして1年も経たない若い企業に、今日紹介したこの分析手法を当てはめるのは、とてもムリがあります。
その限界を知った上で、使ってみて下さい。
最初に断わっておくと、これはあくまでも大雑把な目安に過ぎず、この考え方を金科玉条の如く硬直的に投資判断に当てはめて欲しくないということです。
ただ、ある株の取引されている水準が、大体リーズナブルなのか、それともチャンチャラおかしいかを知る上で、ひとつの参考、ないしは気休めになるという程度の利用価値はあると思います。
まずある銘柄の今年と来年のコンセンサスEPS予想を書き抜きます。これは英語版ヤフー・ファイナンスの個別株のアナリスト予想のページや最近東洋経済から出版された『米国会社四季報』などの情報を使えば良いでしょう。
例えばフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)の場合、下のようになります:
2013年実績 0.88ドル
2014年予想 1.62ドル
2015年予想 2.02ドル
さて、これらの数字を基に、それぞれの年のEPS成長率を求めます。まず2013年から2014年にかけてどれだけ成長したかを計算するには:
(1.62-0.88) ÷ 0.88 = 84.1%
という具合です。同様に2014年から2015年にかけての成長率も計算してやると、こちらは24.7%になります。
このようにしてアメリカの主なハイテク株のEPS成長率を計算したのが下のグラフになります。

さて、ここまでは誰でも簡単に理解できると思いますが、難しいのはこうして得られた解を、実際の投資判断にどう援用してゆくか? という実践面でのノウハウです。
上のグラフで「2014年」はカレントイヤー(current year)、「2015年」はアウトイヤー(out year)と投資コミュニティでは称します。
普通、一株当たり利益(PER)を論じる際は、アウトイヤーを使うクセを付けてください。これはただ単純に、「ウォール街の関係者は皆、そうしているから」という理由によります。
次に現在、場で付いている、その銘柄の株価を調べます。フェイスブックの場合、今日の引け値は$78.54でした。株価収益率(PER)の求め方は、株価÷EPSです。すると:
78.54 ÷ 2.02 = 38.88
がフェイスブックの2015年のEPSに基づいたPERということになります。
この38.88倍というPERは、高いのでしょうか? それともリーズナブルなのでしょうか?
いまフェイスブックのEPS成長率を見ると今年が84.1%、アウトイヤーが24.7%です。するとフェイスブックのPERを今年の成長率と比べると
38.88 ÷ 84.1 = 0.462
です。次にアウトイヤーの成長率に比べると:
38.88 ÷ 24.7 = 1.574
になります。
さて、ここが肝心な点ですが、ウォール街の多くの投資家は「EPS成長率とほぼ同じ程度のPERなら、払っても良い」と考えているという点です。
これは、別に確固とした根拠があっての主張ではありません。あくまでも慣習として、そう感じる投資家が多いということなのです。
EPS成長率とPERが同一ということなら
それを上のフェイスブックの計算結果に当てはめると、カレントイヤーは0.462だから割安、アウトイヤーは1.574だから割高というわけです。
なぜ同じ銘柄なのに、これほど評価に差が出るのでしょうか? それはフェイスブックの成長率をもう一度グラフで確認すると納得がゆくと思います。つまり2014年は84.1%という急成長をしているので、その急成長ぶりからすれば同社株は割安感があるというわけです。逆に2015年にはEPS成長率が24.7%という風に急ブレーキがかかります。すると他の銘柄の橙色のバーと比較すれば一目瞭然ですけど、24.7%程度の成長を出すと予想される銘柄は、他に幾らでもあるわけです。
フェイスブックの場合、いまモバイルのマネタイゼーション(=売上に結びつけること)がとても上手く行き始めたところです。今年の業績の伸びが素晴らしいのは、そのためです。
でもこれはベースが小さいところからはじまっているので、今年、同社が成功を収めれば収めるほど、来年との比較が苦しくなるわけです。
その意味では、単年度で比較するのではなく、ざっくりと今年と来年の成長率の平均を取って比較した方が同社の成長の実態を上手くとらえることができると主張することも出来るでしょう。
その、ブレンドした成長率に照らしてみると、フェイスブックはほぼフェアなバリューで取引されているということになるわけです。
このようにEPS成長率とPERを比べる際は、その企業がどれだけ小さいか(=小さいほど、成長の初速は高くなります)、一時的な要因が絡んでいるか(=若い企業ほど、そのような特殊要因にEPSが振り回されます)など、留意しなければいけないことが沢山あるのです。
だからIPOして1年も経たない若い企業に、今日紹介したこの分析手法を当てはめるのは、とてもムリがあります。
その限界を知った上で、使ってみて下さい。